研究実績の概要 |
2022年度は、主にマクロファージ (Mf) におけるPGISの機能について解析した。まずMf分化時におけるPGISの機能について、骨髄由来Mf (BMDM) を用い検討した。野生型およびPGIS遺伝子欠損マウスから骨髄細胞を採取し、M-CSF添加によりM0細胞を作成した。さらにM0細胞をLPS +IFNγ添加によりM1細胞に、IL-4添加によりM2細胞に分化させた。リアルタイムPCR 法によりM1マーカーであるiNOS、M2マーカーであるYm-1の遺伝子発現を解析したところ、これらM1, M2マーカーの発現量にPGIS欠損による影響は見られなかった。このことから、PGISのM1, M2分化への影響は軽微であると考えられた。次にプロスタグランジン (PG) 産生酵素の発現量を検討したところ、M1細胞ではM0, M2細胞と比較し、COX-2やmPGES-1の遺伝子発現の増加が見られた。一方、M2細胞においてはPGISやCOX-1の遺伝子発現がM0, M1細胞と比較して増加していた。これらの細胞におけるPG産生をLC-MS/MSを用いて解析したところ、M0, M1, M2細胞いずれにおいても、PGE2が最も多く検出されたが、PGI2の安定代謝物である6-keto-PGF1aは最も産生量が少なかった。次に、細胞の起源によりPG産生能が異なると考え、マウス腹腔内細胞から腹腔内Mfを調製し検討に用いた。腹腔内MfでのPG産生量について検討したところ、BMDMと異なり6-keto-PGF1aが最も多く検出された。腹腔内MfにM1分化に必要なLPS +IFNγ刺激、M2分化に必要なIL-4刺激を行ったところ、M2細胞においてPGISの遺伝子発現が増加した。以上のことから、PGISはM1細胞と比較しM2細胞において多く発現し、M2細胞はM1細胞よりもPGI2産生能が高いことが考えられた。
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