研究課題/領域番号 |
22K15285
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
喜多 絢海 摂南大学, 薬学部, 助教 (40881363)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | タンパク質間相互作用 / 反応性アストロサイト / 脳梗塞 |
研究実績の概要 |
梗塞脳で出現する反応性アストロサイトには、神経傷害的なA1、神経保護的なA2が存在し、A1アストロサイトは脳梗塞後の神経再生過程における有害因子である。本研究では、A1およびA2アストロサイト両者の出現を促進するSTAT3に着目し、A1およびA2アストロサイトの出現過程におけるSTAT3のタンパク質間相互作用を解析することでA1アストロサイトの出現に特異的な相互作用を同定する。また、同定した相互作用の制御によるA1アストロサイトの出現の抑制が脳梗塞後の脳機能回復にもたらす影響を解析することで、新たな脳梗塞後遺症の治療標的の発見を目指す。 令和4年度では、細胞内光クロスリンク法を用いて、ラットアストロサイトがA1およびA2アストロサイトへと変化する過程でのSTAT3のタンパク質間相互作用の変化を調べることにした。A1およびA2アストロサイトへは既報の手法を用いて、ラットアストロサイトからの誘導を試みた。各マーカー分子の発現量を確認したところ、A1アストロサイトへの誘導は良好に行えていたが、A2アストロサイトを誘導することは出来なかった。そこで、A1アストロサイトについてのみ解析を進めることにした。光クロスリンカーを導入したSTAT3を発現させたラット初代培養アストロサイトを、A1アストロサイトに誘導し、経時的な相互作用の変化をWestern blottingによって解析した。光クロスリンカーはSTAT3の相互作用に重要なドメインであるN末端ドメインおよびC末端ドメインのタンパク質表面に導入した。誘導開始から0.5~2時間後にSTAT3の相互作用に変化が見られた。そこで、次に、変化している相互作用を同定するべく、質量分析を行うことにしたが、解析に必要なタンパク質量が十分に得られなかった。現在、質量分析で解析可能なタンパク質複合体量を得るために条件の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
A2アストロサイトへの誘導が行えず、誘導条件の検討を行ったが、適する条件が見つからなかったため。また、質量分析に必要なタンパク質複合体量が足らず、収量を増やすための条件を検討する必要があり、質量分析による解析が遅れているため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に見出したA1アストロサイトの誘導に関与するSTAT3相互作用について質量分析で解析を進め、相互作用を同定する。次に、同定したSTAT3の相互作用因子の増加および欠失が、A1およびA2アストロサイトへの変化を含むアストロサイトの性質変化にどのような影響を与えるのか解析する。さらに、STAT3と相互作用因子の結合の阻害によって、in vivoにおいてもA1アストロサイトの出現が抑制されるのか、脳梗塞モデル動物の脳機能の回復にどのような影響を与えるのかについて解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
委託解析する予定であった質量分析を令和5年度に実施することになったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は前述の通り質量分析に使用する予定である。
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