梗塞脳で出現する反応性アストロサイトには、神経傷害的なA1、神経保護的なA2が存在し、A1アストロサイトは脳梗塞後の神経再生過程における有害因子である。本研究では、A1およびA2アストロサイト両者の出現を促進するSTAT3に着目し、A1およびA2アストロサイトの出現過程におけるSTAT3のタンパク質間相互作用を解析することでA1アストロサイトの出現に特異的な相互作用を同定する。また、同定した相互作用の制御によるA1アストロサイトの出現の抑制が脳梗塞後の脳機能回復にもたらす影響を解析することで、新たな脳梗塞後遺症の治療標的の発見を目指す。 細胞内光クロスリンク法を用いて、ラットアストロサイトがA1アストロサイトへと変化する過程でのSTAT3のタンパク質間相互作用の同定を行った。令和4年度では、光クロスリンカーを導入したSTAT3を発現させたラット初代培養アストロサイトを、A1アストロサイトに誘導し、経時的な相互作用の変化をWestern blottingによって解析したところ、誘導開始から0.5~2時間後にSTAT3の相互作用に変化が見られた。そこで、令和5年度では、変化した相互作用を同定するべく、質量分析を行った。質量分析の結果、Myosin-9、HDAC6をSTAT3の相互作用因子の候補として同定した。また、アストロサイトをA1アストロサイトへ誘導する過程において、前述の相互作用因子候補とSTAT3との相互作用は減弱することが明らかになった。これら相互作用がA1アストロサイトへの誘導に関与しているか、現在検証を進めている。
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