研究課題
行動嗜癖は依存症の一種であり、社会生活に悪影響を及ぼすにも関わらず、インターネットやゲーム、ギャンブルなど特定の行動にのめり込んでしまう状態を指す。本研究では、マウスがエサなどの報酬がなくてもランニングホイール(RW)を執拗に回転させることや、RWへの長期間の曝露が薬物依存症モデル動物で観察されるような神経可塑的変化や離脱症状を引き起こすことに着目し、RW回転行動への「異常な欲求」の体系的な評価による行動嗜癖モデルマウスの作出を試みた。さらに、セロトニン(5-HT)神経伝達に着目し、行動嗜癖の病態メカニズムを神経回路・受容体レベルで解明することを目指した。本年度は、まずファイバーフォトメトリー法による側坐核ドパミン(DA)遊離変化と神経活動変化の測定、およびDA遊離変化に対する5-HT神経伝達の関与について検討した。10回の鼻先挿入によりRW回転行動が可能となるFR10課題中の側坐核でのドパミン(DA)遊離と神経活動変化を測定したところ、それぞれ鼻先挿入や報酬獲得など欲求関連行動時に変化が生じることが明らかになった。一方で、前年度までの検討でFR10課題において鼻先挿入回数の減少が確認された5-HT2Aあるいは5-HT2C受容体阻害薬の全身投与は側坐核におけるDA遊離変化に影響を与えなかった。次に、臨床での嗜癖の診断基準に基づく行動嗜癖病態モデル作製を試み、約35%のマウスが行動嗜癖病態モデルマウスとして分類されることを見出した。このモデルマウスに対して、カンナビノイドCB1受容体阻害薬、および5-HT2A受容体阻害薬の反復全身投与を行ったところ、RW回転行動に対する欲求を評価する各指標の値が低下することが明らかになった。
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