• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

プロスタノイドEP4受容体高発現大腸がんの治療的探索を目指した機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K15293
研究機関徳島大学

研究代表者

福島 圭穣  徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 助教 (10805112)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード薬学 / 薬理学 / プロスタノイド / Gタンパク質共役型受容体 / バイオインフォマティクス
研究実績の概要

遺伝子ビッグデータの解析により、実臨床の大腸がんには、E型プロスタノイド(EP)受容体サブタイプの発現パターンが明確に異なるがんクラスターが存在する可能性が明らかとなった。本研究では、このEP受容体を特徴的に高発現する各がんクラスターに着目し、その発生・悪性化のメカニズムを明らかにすることを目的とする。
2022年度は、がんゲノムビッグデータの解析を完了し、実臨床の大腸がん組織にはEP4受容体の他にも、EP1、EP2、EP3受容体の高発現クラスターがそれぞれ存在することを明らかとした。これらのEP受容体高発現クラスターは、全大腸がん患者のおおよそ1/4を占め、その殆どは単一のEP受容体サブタイプのみを特異的に発現し、互いに異なる遺伝子発現パターンを示した。さらにこの内、最も特徴的な遺伝子発現パターンを示したEP3受容体について、その発現変動遺伝子を抽出して解析を行った。その結果、EP3受容体高発現クラスターは上皮系細胞マーカーの発現が低い一方で間葉系細胞マーカーの発現が高く、さらに上皮間葉転換(EMT)マーカー遺伝子の発現亢進が認められた。以上の結果より、EP3受容体高発現クラスターの大腸がんは、EMTを引き起こした後期がんである可能性が考えられた。同様の解析手法を用い、EP4受容体高発現クラスターなどの他のがんクラスターについても、現在解析中である。
さらに、EP4受容体刺激時の細胞応答を明らかにするため、EP4受容体を安定的に発現したヒトHEK293細胞をプロスタグランジンE2で刺激し、その後リン酸化されるタンパク質を網羅的に定量した。その結果、EP4受容体刺激によって有意にリン酸化される約800種類のタンパク質を同定した。これらのタンパク質についても、今後継続して解析してゆく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度は、がんゲノムビッグデータの解析を完了し、EP4受容体高発現クラスターを同定するだけではなく、実臨床の大腸がん組織にはEP4受容体の他にも、EP1、EP2、EP3受容体の高発現クラスターがそれぞれ存在することを見出した。さらに、これらのがんクラスターは、興味深いことにそれぞれ単一の種類のEP受容体サブタイプのみを高発現し、さらに互いに大きく異なる遺伝子発現パターンを示すことも明らかとした。2022年度はこの内EP3受容体高発現クラスターに特に着目して解析することで、このがんクラスターはEMTを引き起こした後の後期がんである可能性を報告することができた。EP1、EP2およびEP4受容体高発現クラスターについても同様の解析が実施可能で、2022年度はこれらEP受容体サブタイプの機能解析を行う上で重要な知見が得られたものと考えられる。
さらに2022年度は、EP4受容体を安定的に発現するモデル細胞に対してリン酸化プロテオミクス解析を実施することで、EP4受容体刺激時にリン酸化が亢進するタンパク質の解析も開始した。現在までに、EP4受容体のリン酸化応答因子としておよそ800種類のタンパク質を抽出済みである。これらのリン酸化プロテオミクスによる解析結果を、これまでの研究によって得られていたトランスクリプトーム解析結果と連携させることで、EP4受容体下流のシグナルをより詳細に解明できるものと考えられる。

今後の研究の推進方策

これまでに、実際の大腸がん組織において、EP4受容体高発現クラスターの同定とその発現変動遺伝子の抽出を完了し、さらにEP4受容体刺激時にリン酸化するタンパク質の同定を完了した。2023年度は引き続き、抽出された遺伝子の解析を進める。RNA-seqによって解析されたEP4受容体刺激時の遺伝子応答と、リン酸化プロテオミクスによって解析されたEP受容体刺激時のリン酸化パターンを比較し、EP4受容体下流の大腸がん発生・悪性化シグナルを具体的に明らかにしてゆく。抽出された各候補因子について、EP4受容体を安定発現したヒトHEK293細胞や、ヒト初期大腸がん細胞HCA-7細胞などのモデル細胞をPGE2で刺激し、刺激後の因子の発現誘導や活性化を評価する。各種シグナル阻害薬を用い、その上流・下流シグナルを明らかにしてゆく。
また、これまでに見出されている補体制御因子についても、モデル細胞を用いた実験により詳細に評価する。EP4受容体を種々の濃度・時間でPGE2で刺激し、その際の補体制御因子の発現量を比較する。遺伝子応答データベースなどを用い、補体制御因子の発現を誘導・抑制する可能性のあるシグナル阻害薬を抽出する。これらの阻害薬などを利用し、EP4受容体が補体制御因子の発現を制御する具体的なシグナル経路を明らかとする。さらに、がんモデル細胞を用い、補体制御因子の阻害や誘導が、大腸がんの増殖や悪性化にどの様に影響をおよぼすか評価する。
以上の実験などを施行することで、EP4受容体が大腸がんを発生・悪性化させるメカニズムを明らかにしてゆく。

次年度使用額が生じた理由

(理由)本年度の研究に必要な細胞実験が予定より少額で賄えたため、次年度使用額が生じた。
(使用計画)次年度は、より詳細な検討のため細胞実験のための消耗品が多く必要になると予想されるため、次年度研究費と合わせて使用する計画である。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] Characterization of Immune Checkpoint Inhibitor Induced Myasthenia Gravis Using the US Food and Drug Administration Adverse Event Reporting System2022

    • 著者名/発表者名
      Niimura Takahiro、Zamami Yoshito、Miyata Koji、Mikami Takahisa、Asada Mizuho、Fukushima Keijo、et al.
    • 雑誌名

      The Journal of Clinical Pharmacology

      巻: 63 ページ: 473~479

    • DOI

      10.1002/jcph.2187

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characterization of Human Parainfluenza Virus Receptor Using Terminal Sialic Acid Linkage-Modified Cells2022

    • 著者名/発表者名
      Fukushima Keijo、Takahashi Tadanobu、Suzuki Takashi
    • 雑誌名

      Methods Mol. Biol.

      巻: 2556 ページ: 169~178

    • DOI

      10.1007/978-1-0716-2635-1_13

  • [雑誌論文] PARP14 regulates EP4 receptor expression in human colon cancer HCA-7 cells2022

    • 著者名/発表者名
      Mashimo Masato、Shimizu Asuka、Mori Aimi、Hamaguchi Ayaka、Fukushima Keijo、Seira Naofumi、Fujii Takeshi、Fujino Hiromichi
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 623 ページ: 133~139

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2022.07.055

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Identification and Characterization of Human Colorectal Cancer Cluster Predominantly Expressing EP3 Prostanoid Receptor Subtype2022

    • 著者名/発表者名
      Fukushima Keijo、Fujino Hiromichi
    • 雑誌名

      Biological and Pharmaceutical Bulletin

      巻: 45 ページ: 698~702

    • DOI

      10.1248/bpb.b22-00104

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Down-regulation of the expression of cyclooxygenase-2 and prostaglandin E2 by interleukin-4 is mediated via a reduction in the expression of prostanoid EP4 receptors in HCA-7 human colon cancer cells2022

    • 著者名/発表者名
      Kitagawa Kana、Hamaguchi Ayaka、Fukushima Keijo、Nakano Yuki、Regan John W.、Mashimo Masato、Fujino Hiromichi
    • 雑誌名

      European Journal of Pharmacology

      巻: 920 ページ: 174863~174863

    • DOI

      10.1016/j.ejphar.2022.174863

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Phosphatidylcholine-Plasmalogen-Oleic Acid Has Protective Effects against Arachidonic Acid-Induced Cytotoxicity2022

    • 著者名/発表者名
      Yamagiwa Natsuki、Kobayashi Haruka、Okabayashi Haruka、Yasuda Miki、Fukushima Keijo、Kawamura Jun、Kotoura Satoshi、Fujino Hiromichi
    • 雑誌名

      Biological and Pharmaceutical Bulletin

      巻: 45 ページ: 643~648

    • DOI

      10.1248/bpb.b22-00035

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Gαs‐protein‐mediated pathway may be steadily stimulated by prostanoid EP2 receptors, but not by EP4 receptors2022

    • 著者名/発表者名
      Fukushima Keijo、Senoo Kanaho、Kurata Naoki、Regan John W.、Fujino Hiromichi
    • 雑誌名

      FEBS Open Bio

      巻: 12 ページ: 775~783

    • DOI

      10.1002/2211-5463.13378

    • 査読あり
  • [学会発表] PGJ2のヒトEP2プロスタノイド受容体を介したcAMP産生に対する影響2023

    • 著者名/発表者名
      山下 真由、山本 瞳、篠原 万侑、福島 圭穣、菅波 晃子、田村 裕、藤野 裕道
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会
  • [学会発表] P4プロスタノイド受容体シグナルの代謝機構への影響2023

    • 著者名/発表者名
      中野 佑基、松本 聖加、大木元綾夏、染谷 早紀、福島 圭穣、藤野 裕道
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会
  • [学会発表] プラズマローゲンによるアルツハイマー病発症予防メカニズムの解明2023

    • 著者名/発表者名
      岡林 春花、安田 美紀、新居 千夏、福島 圭穣、湯浅 浩気、琴浦 聡、藤野 裕道
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会
  • [学会発表] プロスタグランジンD2代謝物のCRTH2受容体を介した機能的差異の解明2023

    • 著者名/発表者名
      縣 美穂、蓮岡 奈苗、間下 雅士、福島 圭穣、藤野 裕道
    • 学会等名
      日本薬学会 第143年会
  • [学会発表] EP3プロスタノイド受容体サブタイプを高発現するヒト大腸がんクラスターの同定と性質評価2022

    • 著者名/発表者名
      福島 圭穣、藤野 裕道
    • 学会等名
      第96回 日本薬理学会年会
  • [学会発表] パラグアイ原産ハーブCyclollepis genistoides D. Don(パロアッスル)の抗糖尿病生物活性成分含有画分の活性評価2022

    • 著者名/発表者名
      三竿 顕也、北島満里子、村木 拓斗、林 隼太郎、高橋 晃輝、福島 圭穣、北井淳一郎、奥村 明子、吉田 博也、石川 勇人、藤野 裕道
    • 学会等名
      第96回 日本薬理学会年会
  • [学会発表] フィブラート系薬剤の腎保護効果に関する検討2022

    • 著者名/発表者名
      村嶋 優香、堀ノ内裕也、山田 佑人、吉岡 駿、福島 圭穣、久禮 匠、佐々木尚史、藤野 裕道、四宮 一昭、池田 康将
    • 学会等名
      第61回 日本薬学会 中四国支部学術大会
  • [学会発表] プロスタノイドEP2受容体とEP4受容体2022

    • 著者名/発表者名
      福島 圭穣、藤野 裕道
    • 学会等名
      生体機能と創薬シンポジウム2022
  • [学会発表] 内因性カンナビノイドによる抗結腸がんメカニズムの解明2022

    • 著者名/発表者名
      三竿 顕也、福島 圭穣、藤野 裕道
    • 学会等名
      第63回 日本生化学会 中国・四国支部例会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi