研究課題
免疫チェックポイント阻害剤(ICIs)は癌治療において革命的な成果を挙げる一方で、心筋炎などの重篤な副作用が問題とされている。特に心筋炎は高い致死率を伴うため、その予防及び治療法の開発が急務である。本研究では、効率的な薬剤開発のための新たな動物モデルを開発し、そのモデルを用いてビタミンDの心筋炎予防効果を評価した。PD-1遺伝子をノックアウトしたBALB/c系統のマウス(PD-1-KO-N12)を用い、ミオシンおよび百日咳毒素を心筋炎の誘発剤として投与して、ICIs関連心筋炎モデルマウスを作成した。投与後21日目に解剖を行い、心筋炎の発症を評価するために、組織染色、炎症性サイトカインの遺伝子解析、心筋関連マーカーの定量を行った。モデルマウスでは心筋組織への細胞浸潤と炎症の誘発を促した。HE染色結果からは、心筋組織内への顕著な細胞浸潤が確認され、IL-6、IL-1b、TNFαといった炎症性サイトカインの増加が遺伝子レベルで観察された。これにより、本モデルが心筋炎の発症を再現するのに有効であることが示された。また、別群にビタミンDを投与した結果、心筋炎の発症率が著しく低下し、細胞浸潤および炎症反応が抑制されることが確認された。PD-1-KO-N12モデルは長命かつ適時に心筋炎を誘発できるため、ICIs関連心筋炎の予防薬を探索する実験に適していることが示された。ビタミンDが心筋炎の予防に有効であることも示唆され、今後の治療薬開発の有力な候補となり得ることが示唆された。
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