富山大学和漢医薬学総合研究所が有する160種類の生薬抽出液および漢方方剤抽出液のライブラリーに対して、AspH阻害活性試験を実施した。はじめに、阻害活性試験に使用するアッセイ系の構築を行った。AspHは酵素反応により2-オキソグルタル酸(2OG)をコハク酸へ変換することが知られている。つまり、試料中にAspH阻害剤が存在する場合はコハク酸の生成量が低下する。そこで、コハク酸の生成量を可視化するアッセイ系の構築を以下の3つの反応系により行った。 1. AspHの基質であるEGFD1、共基質である2OGおよび補因子である鉄イオンとアスコルビン酸を使用し、AspHに対する一次反応を実施する。2. 一次反応の反応生成物であるコハク酸を、ATPおよびCoAの存在下でSuccinyl-CoA Synthetase(SCS)によってSuccinyl-CoAに変換する二次反応を実施する。3. Malachite Green Phosphate Assay Kitを使用して、二次反応で放出されたモノリン酸を検出する三次反応を実施し、620 nmの吸光測定によるモノリン酸濃度依存的な検出を行う。 EGFD1はAspHの基質認識において必須の39残基のペプチドとして、異種大腸菌にて大量発現および多段階精製によって高純度化した。同様に、AspHおよびSCSも異種大腸菌による大量発現および多段階精製により高純度化した。 上記の阻害活性スクリーニング試験では、複数の生薬、および漢方方剤抽出液が、濃度依存的にAspHの阻害活性を示すことが判明した。引き続き、AspH阻害活性を示す化合物を複数単離した。特に強いAspH阻害活性を示す天然物に対しては、AspHとの共結晶化を試みた。X線結晶構造解析の結果、天然物のAspH阻害活性機構の解明に成功した。現在、これらの成果に対する論文を執筆中である。
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