研究課題/領域番号 |
22K15316
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤田 有美 金沢大学, 附属病院, 特任助教 (50876026)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | タクロリムス / CD4/CD8 T細胞比 / 妊娠期薬物治療 |
研究実績の概要 |
2018年に免疫抑制剤であるタクロリムスの妊婦使用禁忌は解除となったが、タクロリムスによる催奇形性以外の新生児毒性、特に免疫への影響は報告がない。そこで、本研究では、子宮内タクロリムス曝露モデルマウスの作製を行い、子宮内タクロリムス曝露児の免疫能及びワクチンへの応答能力解明を目的とした。2022年度では、子宮内タクロリムス暴露新生児モデルマウスを作製した。母体血中タクロリムス濃度が臨床容量となるように高投与量と低投与量の2つの投与量を設計し、臨床と同様に妊娠前からのタクロリムス投与を行なってモデルマウスの作製を行った。その結果、両投与量群にて、母体血中タクロリムス濃度が臨床濃度域で定常に達しており、かつ母体のCD4陽性T細胞数がコントロール群に比べて有意に減少した。これらの結果より、臨床を反映したモデルマウスは作製できたと考える。これらのモデルマウスを用いて新生児のT細胞を解析したところ、低投与量群ではCD4/CD8 T細胞比が高く、高投与量群ではCD4/CD8 T細胞比が低くなり、母体への投与量によって新生児のCD4/CD8 T細胞比が異なる挙動を示した。これまでの研究では妊娠後期にタクロリムスを投与しており、短期間投与でのタクロリムスの新生児毒性を評価した報告は多数散見するが、長期間暴露でのタクロリムスによる新生児毒性を評価したものはない。現状で得られた結果から、タクロリムスの投与量が新生児のT細胞に影響を与えたのか、それともタクロリムスの暴露期間が影響を与えたのかは判別ができない。そこで、2023年度では、モデルマウスにおけるワクチン免疫応答能に加え、子宮内でのタクロリムス曝露期間のどちらが新生児のCD4/CD8 T細胞比に影響を与えるのかも検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も時間がかかると想定していたモデルマウス作成が計画通りに進行した。しかし、「新生児へのタクロリムスの影響が投与量依存なのか暴露期間依存なのか」という新たな疑問も生じたため、2023年度では元々の計画に追加して本疑問を解決する研究も計画する。
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今後の研究の推進方策 |
今後はモデルマウスにおけるワクチン免疫応答能評価を行うとともに、子宮内でのタクロリムス暴露期間によってタクロリムスの新生児への影響が変動するかを検討する。モデルマウスにおけるワクチン免疫応答能評価ではモデルマウスにワクチン接種後、免疫応答能を評価するまでに数週間時間が空く。免疫応答能の評価をするまでの期間にて、子宮内でのタクロリムス曝露期間によってタクロリムスの新生児への影響が変動するかを検討する。なお、子宮内でのタクロリムス曝露期間は母体にてタクロリムスが定常状態となる数日から2週間程度とし、短期から中期でのタクロリムス曝露による影響を検討する。
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