2022年度では、子宮内タクロリムス暴露新生児モデルマウス(長期子宮内タクロリムス曝露モデル)を作製し、本モデルを用いて新生児のT細胞を解析したところ、低投与量群ではCD4/CD8 T細胞比が高く、高投与量群ではCD4/CD8 T細胞比が低く なり、母体への投与量によって新生児のCD4/CD8 T細胞比が異なる挙動を示した。母体のタクロリムス濃度と新生児のCD4/CD8比の相関を取ったところ、正の相関が得られた。これまでに、子宮内タクロリムス曝露期間による新生児免疫機能への影響については明らかとなっていない。そこで、得られた結果が長期的な曝露によるものであるかを明らかにするため、2023年度では、妊娠16.5日目メスマウスに臨床容量となるように高投与量と低投与量の2つのタクロリムス投与量を投与した短期子宮内タクロリムス曝露モデルマウスの作製を行った。短期子宮内タクロリムス曝露モデルマウにおいても長期子宮内タクロリムス曝露モデル同様、母体血中タクロリムス濃度が臨床 濃度域で定常に達しており、かつ母体のCD4陽性T細胞数がコントロール群に比べて有意に減少した。しかし、母体のタクロリムス濃度と新生児のCD4/CD8比の相関を取ったところ、負の相関が得られた。以上のことからタクロリムスの子宮内曝露期間によって新生児の免疫応答能力は異なる可能性が見出された。本助成期間内に新生児のワクチンへの応答能解析までには至らなかった。しかし、長期子宮内タクロリムス曝露モデル、ワクチン接種時の免疫応答を司るCD4細胞数は新生児においてタクロリムス非投与時と同程度あるいはそれ以上となった。以上より、短期的な投与ではなく妊娠前から長期的に臨床容量のタクロリムスを母体に投与した場合、新生児のワクチンへの応答能力は十分である可能性が高い。
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