研究課題/領域番号 |
22K15326
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
松本 奈都美 昭和大学, 薬学部, 講師 (00897639)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ABCC4 / 5′-DFUR / TYMP / cAMP |
研究実績の概要 |
我々は予備的検討にてこれまでにエントリーした37症例について、ABCC4 rs3742106のTアリルのホモまたはヘテロ接合体において、5′-DFURのAUCがGアリルのホモ接合体と比較して有意に低いことを見出した。このメカニズムを探るため、共同研究を行なっている金沢大学の協力を得て以下の研究を進めた。 まず、ABCC4による5′-DFURの輸送活性をベシクル法にて検討した。その結果、ABCC4は5′-DFURを輸送しなかった。そこで、5′-DFURの体内動態の変動に影響を与える因子を生理学的薬物速度論モデルを用いて検討し、チミジンホスホリラーゼ(TYMP)が関与することを明らかにした。 ABCC4 rs3742106のTアリルをホモで持つ細胞では、ABCC4の蛋白やmRNAの発現が低下する。ヒト肝細胞株HepaRG細胞において、ABCC4をノックダウンした細胞(siABCC4)ではコントロールと比較してTYMPのmRNAの発現が有意に高かった。また、siABCC4ではABCC4の内因性基質であり、セカンドメッセンジャーであるcAMP量が有意に高かった。更には、HepaRG細胞にcAMPアナログを暴露したところ、暴露しない細胞と比較してTYMPのmRNAが有意に高かった。 以上より、ABCC4 rs3742106のTをホモに有する患者では、ABCC4の低発現が細胞内cAMP濃度を高め、TYMPの遺伝子発現を高めることで、5′-DFURの代謝を促進し、5′-DFURのAUCが低くなる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したように2022年度の研究により、ABCC4が5′-DFURの体内動態を変化させるメカニズムの解明を進めることができた。また、これまでにエントリーした患者のゲノムDNAを用いたエクソーム解析により、カペシタビンによる毒性や体内動態に関連する遺伝子多型を網羅的に解析することにも着手している。これらの進展を鑑み、研究はおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
1) カペシタビンの前向きな臨床研究を継続し、患者のエントリーを進めて行く。 2) 本研究開始時に着目した核酸輸送担体のみならず、カペシタビンの代謝や輸送に関わる分子の遺伝子多型とカペシタビンによる毒性や体内動態との関連を、これまでにエントリーした患者のゲノムDNAを用いたエクソーム解析にて網羅的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は主に共同研究を行っている金沢大学にて研究を進めたため、残金が生じた。金沢大学にて進めた研究は予備的研究であるため、次年度以降、患者のエントリーを継続し、更に検討していく。 また、次の研究項目を進めていく。1)カペシタビンの毒性や体内動態と関連する遺伝子多型を見出すため、エクソーム解析を行う。2) 1)にて挙がった候補遺伝子についてカペシタビンの毒性や体内動態と関連するメカニズムを検討する。 以上の研究を行うため、2022年度の残金を2023年度の予算と合算して使用する。
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