研究課題/領域番号 |
22K15327
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
秋田 智后 東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 講師 (60801157)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) / 活性型ビタミンD3 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease; COPD)は不可逆的な肺胞破壊により呼吸困難を生じる疾患であるが、COPD根治を可能にする肺胞再生可能な薬剤は開発されていない。申請者らはこれまでに、マウスに適した経肺投与方法を確立し、COPDモデルマウスにおいて活性型ビタミンD3(1,25(OH)2D3)の分化誘導による肺胞再生効果を検証して臨床用粉末吸入剤の開発を行ってきた。しかし、COPD患者には疾患症状や呼吸機能が1日を通して変化する概日リズムの存在が示唆されるため、疾患に関連した概日リズムが肺胞再生効果にどのように影響するのか明らかにすることを目的に、本年度は以下の検討を行った。4時間おきに24時間、作用点とされるビタミンD受容体(VDR)の遺伝子発現リズムを調べた結果、Calu-6細胞でのVDR相対発現量はデキサメタゾン処理0時間後にトラフ値、4時間後にピーク値を示した。次に、VDR発現量の最大時刻と最小時刻に1,25(OH)2D3を処置し、分化誘導効果に差が生じるか評価した。その結果、1,25(OH)2D3はCalu-6細胞をI型およびII型肺胞上皮様細胞へと分化させたが、処置時刻による分化誘導能に有意な差はみられなかった。一方、分化誘導後のVDR発現リズムは分化誘導前と比較し12時間のピークシフトがみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分化誘導モデルである未分化肺がん細胞株Calu-6にデキサメタゾンを処理してリズム同調させた後、4時間おきに24時間、細胞のVDR発現量を調べた。その結果、VDR相対発現量は0時間後にトラフ値、4時間後にピーク値を示した。次に、VDR発現レベルの強弱といった概日リズムが分化誘導効果に影響を与えるか検討するため、デキサメタゾン処理後0時間と4時間後のCalu-6細胞に1,25(OH)2D3を処理し、分化誘導効果に差が生じるかを免疫染色により評価した。その結果、1,25(OH)2D3はCalu-6細胞をI型およびII型肺胞上皮様細胞へと分化させたが、処置時刻による分化誘導能に有意な差はみられなかった。そこで、1,25(OH)2D3を処理して分化を誘導したCalu-6細胞にデキサメタゾン処理を行い、4時間ごとの時計遺伝子およびVDRの概日リズムを評価したところ、VDRのトラフ時刻、ピーク時刻ともに分化誘導前の細胞におけるVDRの日内変動と比較し12時間の差がみられた。 これらの知見は、本研究の目標である1,25(OH)2D3経肺投与時刻のCOPD治療効果への影響解明と至適投与時刻の推定に着実に貢献していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はin vivoでの治療効果において1,25(OH)2D3至適投与時刻を推定するため、以下の検討を行う。Normalマウス及びCOPDモデルマウスから4時間ごとに肺を摘出してRT-PCR、ウエスタンブロット法で時計遺伝子(Bmal1、Per2)、VDR発現量を測定し、最小発現時刻の値を1とした相対発現量を解析して経時的な変化を調べる。また、炎症性マーカーTNFα等、VDR以外のCOPD関連因子についても検討する。これにより、COPDモデル化による肺胞破壊がどのように概日リズムに影響するのかを明らかにし、薬物投与タイミングを推定する。
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