研究課題
シスプラチン(CDDP)は悪性腫瘍に対する化学療法剤であり、多くのがん化学療法プロトコールにおいて中心的な役割を担っている。しかし、多くの患者で急性腎障害がみられることも明らかになっていることから、患者のQOL向上のための新たな治療法や概念の開拓が急務となっている。抗がん剤の薬理作用は時刻によって異なることも報告されていることから、申請者は24時間を1つの周期とした概日リズムに着目し、薬理作用と毒性作用を同時に解析することで、より効率的な治療法の提案を目的とするものである。2022年度は、赤色蛍光タンパク質RFPを組み込んだヒト大腸腺癌HT29細胞 (HT29-RFP)をメスのNudeマウスに移植し、移植2週間が経過してから8時または20時にCDDPを5 mg/kgの用量で週に3回投与を4週間続け、体重および腫瘍サイズを経時的に観察することで薬理作用(腫瘍サイズ:インビボイメージングシステムにより蛍光強度およびノギス法)ならびに毒性作用(体重)を指標に評価した。8時および20時の両時刻でCDDPを投与すると、対照群と比べ、腫瘍のサイズが有意に縮小することを明らかにした。また、8時と20時の腫瘍サイズを比較すると、20時の投与の方がより縮小する結果となった。腫瘍サイズに加えて、腫瘍の増殖能の指標としてKi67の免疫染色も同様の結果を示した。体重については、8時の投与では減少傾向であるのに対し、20時の投与では有意な減少が確認された。さらに腎障害の血液マーカーであるBUNについても20時では有意なBUN値を示すことを明らかにした。以上の結果より、8時と20時の2時刻でCDDPの薬理作用と毒性作用を評価した結果、薬理作用と毒性作用はともに20時の方が強く顕れることが示唆された。
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