研究課題/領域番号 |
22K15330
|
研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
宮内 優 崇城大学, 薬学部, 講師 (50799947)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | シトクロムP450 / 肝臓 / 酵素誘導 / 肝疾患 / エピソーマルベクター / エレクトロポレーション / 糖化産物 / 活性酸素種 |
研究実績の概要 |
シトクロムP450 (CYP) は主に肝臓に分布し、医薬品を含む生体外異物の酸化を触媒することで解毒する重要な薬物代謝酵素である。CYPの特徴の一つに、特定の化学物質に曝露することによりその発現量が大きく増加する酵素誘導が挙げられる。CYP誘導作用のある化合物への曝露が慢性化することで肝臓がんなどの肝疾患の引き金となるが、その分子機構は明らかになっていない。一方、糖化産物は糖とアミノ酸の非酵素的な結合で生じる化合物の総称であり、加齢とともに体内に蓄積され、糖尿病や肝炎などの原因になる。本研究では、「慢性的に誘導されたCYPが肝臓の糖化産物に対する感受性を上昇させることが、肝疾患を惹起する因子の一つである」との仮定の下、検証を行っている。 本研究でモデルとして着目したヒト肝臓がん由来のHuh-7細胞では、内因性のCYPおよび酵素誘導に必要な因子はほとんど発現していない。そこで、主要なCYP分子種であるCYP3A4とCYP2E1とをエピソーマルベクターに組込み、導入することを目指した。各種トランスフェクション試薬やエレクトロポレーションを用いて検討したが、いずれの方法でも十分な導入には至らなかった。モデル細胞を変更するなどの見直しが必要である。 一方、これまで着目してきた糖化産物ジヒドロピラジンの研究では、その急性毒性を主要な糖化産物(カルボキシメチルリジン、アクリルアミド)と比較することで、ジヒドロピラジンの活性酸素種の産生能が急性毒性に大きく寄与することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
はじめに着目したHuh-7細胞は、検討した全ての試薬・手法において遺伝子の導入効率が非常に低かった。エピソーマルベクターを用いたCYP3A4/CYP2E1安定発現細胞の作製を目指したものの、導入効率の低さが原因で、抗生物質によるスクリーニングののちにほとんど細胞が生存しなかった。CYPの導入は本研究を遂行する上で不可欠なので、別の細胞を選択するなど、検討を見直す必要がある。一方で、糖化産物そのものに対する研究では、ジヒドロピラジンの細胞毒性発現機構の解明につながる知見を報告するなど前進があった。 以上の点から、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
CYPの導入を目指す細胞の候補として、Huh-7細胞と同じくヒト肝臓がん由来の細胞であるHepG2細胞と、遺伝子導入効率が高いアフリカミドリザルの腎臓由来のCOS-1細胞を考えている。ヒトの肝臓のモデルであるのでHepG2細胞が望ましいが、Huh-7細胞と同様に遺伝子導入効率は高くない。トランスフェクション試薬やエレクトロポレーションを検討する予定だが、検討に要する時間に注意しながら必要に応じてCOS-1細胞に切り替える。また、エピソーマルベクターではスクリーニングに使用する抗生物質の濃度設定が困難であった。定法に倣って安定発現系を作製することも選択肢に加える。 上記のような方法でCYP導入細胞を作製し、糖化産物の影響を評価する。
|