研究課題/領域番号 |
22K15344
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
柴田 実可子 東北工業大学, 工学部, 研究員 (40887056)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 抗がん剤 / ミエリン障害 / 末梢神経毒性 / 軸索伝導速度計測 / CMOS-MEA / AI / 創薬スクリーニング / 感覚ニューロン |
研究実績の概要 |
薬剤性のミエリン障害は、末梢神経でミエリンを形成するシュワン細胞の障害により引き起こされる。末梢神経におけるミエリン化形成メカニズムは古くから同定されているが、薬剤性のミエリン障害のメカニズムは未解明である。また、末梢神経はターンオーバーが遅く、化学療法の神経毒性の影響は予測できない。このことから、ミエリン障害を早期に予測できれば、創薬開発の探索段階における化合物の選別、薬剤の有効性、副作用の評価や作用機序、 リード化合物におけるリスクの順位付け、リスクを回避する為の化合物の修飾等が可能となり、創薬開発におけるコストと時間の大幅な削減につながる。本研究では、CMOS多電極アレイ(CMOS-MEA)による軸索伝導速度計測および、機械学習による画像解析により、ミエリン障害を低濃度で予測できるAIの開発を行った。 ミエリン形成と非ミエリン形成の軸索伝導速度を検出するために、ミエリン形成率を上げる培養条件および薬剤応答に適した培養時期を検討した。分散培養下でのミエリン分化法を適用し、ラット背側後根神経節(DRG)の培養を行った。培養、固定後にミエリン塩基性タンパク(MBP)を蛍光ラベルして光計測で観察した所、ガングリオンからミエリンの形成を確認できた。また、CMOS-MEAチップ上でラットDRGを播種し、細胞の電気活動および軸索伝播が観察できた。しかしながら、チップ上で培養した未固定の細胞で、ミエリン化を確認するのは困難であった。このことから、シュワン細胞と軸索の形態に着目し、ミエリン障害を及ぼす陽性化合物と非陽性化合物を添加し、応答の差が取れるのかを検討することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミエリン形成と非ミエリン形成の軸索伝導速度を検出するために、分散培養下でのミエリン分化法を適用し、ミエリン形成率を上げる培養条件、および薬剤応答に適した培養時期を検討した。ラットDRGを回収、培養し、固定後にMBPを蛍光ラベルして染色画像を取得した。光計測で確認したところ、ガングリオンからミエリンの形成を観察できた。また、CMOS-MEAチップ上での安定した培養条件を明らかにするため、ラットDRGニューロンを播種、培養し、コーティング条件と薬剤応答に適した培養時期を検討した。測定時のコーティング条件を検討することにより、感覚ニューロンをチップ上で培養することに成功した。さらに、細胞体の電気活動および軸索伝播を観察することができた。しかしながら、チップ上で培養している生細胞で、ミエリン化形成を確認することは困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
感覚ニューロンをチップ上で培養し、軸索伝導速度の取得は成功したが、培養した生細胞におけるミエリン化形成の有無を確認することは困難であった。ミエリン障害は、軸索伝導速度の遅延を引き起こす。このことから、シュワン細胞と軸索の形態に着目し、ミエリン障害を及ぼす陽性、非陽性化合物の添加による応答差を検討することとした。ミエリン障害を及ぼす既知の抗がん剤(アミオダロン、スラミン等)を感覚ニューロンに暴露し、存在下、および非存在下で培養を行い、薬剤性のミエリン障害時の軸索伝導速度を検出する。軸索伝導速度は、本研究室で構築済みの自発活動測定、発火している細胞体の同定、軸索位置の同定の工程からなる手法で算出する。また、同条件下で染色画像の取得も行う。取得したデータを、低用量での画像識別が可能なAIを用いて解析を行う。
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