薬剤性のミエリン障害をin vitroで検出する為に、電気計測および画像計測を用いた評価手法を検討した。感覚ニューロンとシュワン細胞をMEAチップ上で培養し、ミエリン障害を及ぼすBortezomibをはじめとする抗がん剤4種類と陰性化合物であるSucrose、DMSOを添加し、24、72,168時間後の電気活動とインピーダンスおよび細胞形態を計測した。Sucroseは添加168時間後も電気活動や神経突起の形態に変化はなく、インピーダンス値も40kΩを維持した。一方、Bortezomib 0.01μMは添加168時間後、電気活動は96.9%減少した。またインピーダンスは42.5%減少し、免疫蛍光画像において広範囲で軸索線維の断片化も観察された。抗がん剤の末梢神経毒性を、時間依存的な電気活動およびインピーダンスの減少によって検出することに成功した。他の抗がん剤においては、インピーダンスの減少の前に電気活動の増加が観察された。電気活動とインピーダンスの同時計測によって、作用機序が異なる抗がん剤の特徴を見出せることがわかった。 また、添加後24時間後に取得した染色画像の機械学習を用いて、より低用量での差異が検出可能なAIを作製した。作製したAIはミエリン障害陽性化合物であるSuraminの毒性を10μMから検出した。先行研究で報告されているSuraminの毒性濃度は200μMであるため、作製したAIはこれまで検出が出来なかった用量での薬剤性ミエリン障害の予測が可能であることが分かった。
|