研究成果の概要 |
高齢化により多剤処方を受ける高齢患者数の増加が予想されている. 薬物の代表的な副作用の1つとして肝障害があり, 多剤処方を受ける患者では肝障害のリスクを高める複数の薬物が意図せず処方されているかもしれない. そこで本研究では医療機関で集積される電子カルテ情報を機械学習により解析することで, 肝障害のリスクを高める未知の薬物の組み合わせ(薬物間相互作用)を探索した. その結果, 機械学習アルゴリズムは従来の手法である線形回帰分析よりも優れた予測性能を示し, このアルゴリズムは臨床において高頻度で使用されているジクロフェナクとファモチジンの組み合わせが肝障害の発症リスクを高めることを示唆した.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究では電子カルテ情報を機械学習により解析することで, 薬物誘発性肝障害発症リスクに関連する潜在的な薬物間相互作用の検出を試みた. 機械学習アルゴリズムはOTC医薬品としても使用されているジクロフェナクやファモチジンの組み合わせが肝障害のリスクを高めることを示唆し, 医療機関に受診している患者のみならず, セルフメディケーションを実施している国民へも一定の注意を払う必要があると思われる. また従来の薬剤疫学的薬物間相互作用は線形回帰分析や不均衡分析により検出されてきたが, 機械学習を用いた検出はこれらの手法よりも高い汎化性を示しつつ相互作用の検出が可能な手法として今後活用が期待できる.
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