研究課題/領域番号 |
22K15359
|
研究機関 | 香川県立保健医療大学 |
研究代表者 |
新美 健太 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 講師 (40807509)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 血管新生 / 転写因子 / 血管内皮細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は血管内皮細胞に発現する転写抑制因子Blimp1が血管新生において果たす機能を特定することを目的とした研究である。 令和4年度は内皮細胞特異的にBlimp1遺伝子を欠失するマウスを用いて生後すぐ(生後6日齢程度)の網膜の血管新生を免疫組織化学により観察することにより、Blimp1の欠失が血管新生の一連のプロセスにどのように影響するかについて検討した。血管内皮細胞特異的なマーカーを用いて網膜血管網の発達を可視化したところ、Blimp1ノックアウトマウスの網膜では顕著に血管の伸長距離と密度が減少していた。血管が伸長する最先端の部分にはtip細胞と呼ばれる遊走に特化した細胞が存在するが、Blimp1ノックアウトマウスではtip細胞数が著しく減少していた。さらにBlimp1ノックアウトマウスの先端部の血管内皮細胞ではゴルジ装置の局在が散逸しており、遊走方向の極性が乱れている可能性が示唆された。次いで増殖期にある細胞特異的なマーカーにより網膜血管網における血管内皮細胞の増殖能を評価したところ、Blimp1ノックアウトマウスでは増殖期にある血管内皮細胞の数が著減していることが分かった。これらの異常は一過性ではなく、長期間経過しても回復は見られなかった。また一度形成された血管網に対してBlimp1を欠失しても表現型は特に現れなかった。 また上記のような著しい血管新生異常をもたらす原因を特定するため、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)においてBlimp1をノックダウンし、遺伝子の発現変動を網羅的に解析した。その結果、過去にBlimp1による転写抑制が知られていない血管新生に関わる因子の発現変動が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、Blimp1ノックアウトマウスにおいて血管新生の一連のプロセスのうちどの部分が障害されているのかについて免疫組織化学による形態観察を用いて特定することができた。またBlimp1ノックアウトによる血管新生異常を説明しうる転写抑制ターゲット遺伝子を網羅的解析によりピックアップすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は令和4年度にピックアップされたBlimp1により転写抑制を受ける可能性がある血管新生阻害因子について、Blimp1による転写抑制を本当に受けるかどうかを定量PCR、ウェスタンブロット、免疫組織化学などにより確認する予定である。Blimp1が当該因子のプロモーターにアクセスするかについてもクロマチン免疫沈降などにより解析する。またBlimp1のノックアウトによる血管新生異常が当該血管新生阻害因子の発現増加を介したものであるかについて、in vitroあるいはin vivoでBlimp1のノックダウンあるいはノックアウトによる表現型を当該因子に対する中和抗体などによりキャンセルできるか調べることにより検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度の終盤に行ったDNAマイクロアレイ解析が当初予定していたよりも低い金額で外部委託できたために次年度使用額が生じた。当該助成金は令和5年度の試薬購入費等の物品費に充てる予定である。
|