研究課題/領域番号 |
22K15365
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
渡邊 将 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90806457)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 小脳 / プロテインキナーゼC / カルシウム依存性カリウムチャネル |
研究実績の概要 |
本研究では、成熟プルキンエ細胞でのみPKCγが欠損したマウス (cKOマウス) と野生型マウスで電気生理学的解析を行った。 プルキンエ細胞の細胞体で記録をしたところ、cKOマウスでは、登上線維由来のシナプス伝達の振幅が小さくなっていた。さらに、cKOマウスでは、複雑スパイクの波形が障害されており、スパイクの発数が野生型と比べて有意に低下していた。したがって、1)PKCγが登上線維由来のシナプス伝達を制御しうることと、2)複雑スパイクを制御しうることを明らかにできたといえる。 さらに、PKCγが欠損したプルキンエ細胞では大容量性のカルシウム依存性カリウムチャネルであるBKチャネルを介した電流が流れやすくなっていた。つまり、PKCγがBKチャネルの機能ないしは数を抑制していると考えられた。 しかし同時に我々は、PKCγが欠損したプルキンエ細胞で、細胞自身の発火が起こりにくくなるという、新たな現象も見出した。この現象はBKチャネルと同じくカルシウム依存性カリウムチャネルの1種であるSKチャネルを阻害することで、野生型とcKOマウスで同程度になった。つまり、PKCγがSKチャネルをも制御している可能性が考えられた。そして、これらの2種類のチャネルは機能が似通っている。そのうえ、SKチャネルが発火や樹状突起における信号伝達を制御しているという報告も存在するため、今後、これらの2種類のチャネルのいずれを介してPKCγが行動や生理現象を制御するのかを切り分けていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題は、申請者が岐阜大学に異動した直後に行い、採択された。当初想定していたより講義の分担が少なかったため、課題に充てる時間を多くとれた。その結果、当初の計画以上に進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
本期間の研究で、BKチャネルだけでなくSKチャネルもPKCγが制御していることが示唆されつつある。これらのチャネルは機能がかなり似通っており、いずれも発火を制御しうる。そのため、薬理実験や遺伝学的手法を交えながら、いずれのチャネルを介してPKCγがそれぞれの現象を制御しているのかを明らかにしていく。
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