本研究では、筋収縮中の体温ひいては温度の役割に着目し、「哺乳動物の筋収縮制御はどの様に行われているか?そのとき体温はどのように利用されているか?」を解明することを目指した。 電子線を活用した量子マテリアルの研究開発に取り組み、その生産技術の確立を進めた。また、量子センシングの応用に先立って、生理学的に重要なメカニズム解明を進め、その成果について以下に詳細を示す。 赤外光レーザーを集光し、水に吸収されることで、任意の位置に瞬時(1 sec以下)に局所的な熱源を形成する顕微システムを構築し、タンパク質一分子及び筋線維の階層にてそれらの筋収縮システムにおける温度の役割について解析した。 具体的には骨格筋と心筋それぞれの筋収縮システムを精製タンパク質を用いて再構成し、その加熱応答性つまりは温度感受性を評価した。その結果、骨格筋と心筋の間で制御タンパク質が活性化する温度の違いがあること、そして心筋よりも骨格筋収縮システムの方が体温付近の温度上昇に敏感であることを示すこととなった。常に拍動している心臓とは異なり、骨格筋には必要な時に瞬時に力を出すために適した機能を持つことを示唆することができた。得られた研究結果については国際学術誌に投稿・掲載され、加えて共同研究機関と共にプレスリリースを行なった。日刊工業新聞の紙面への掲載、更には世界各国の媒体で取り扱われるなど世界的な評価を受けており、研究の注目度を示す指標であるAltmetricにおいても全研究中上位5%の数値を得るに至った。また、代表者は該当の論文の成果についてSociety of General Physiolosistsからは生理学分野で最も栄誉ある若手賞であるCranefield postdoctoral fellow award を日本人で初めて授与された。
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