ゲノムワイド関連解析(GWAS)には一般的に一塩基多型が用いられる。一方、長鎖配列の挿入や欠損といった構造多型はこれまでGWASにはほとんど用いられていない。本研究ではヒトの構造多型のおよそ25%を占める転移因子多型と疾患との関連を調べるため、独自に開発したソフトウェアを用い、転移因子の挿入多型をヒト集団スケールで同定し、遺伝統計解析の枠組みに取り込むことを目的とした。 本年度は、昨年度までに行った転移因子多型を用いたeQTL解析とGWASを論文として出版した。本論文はNature Genetics誌にアクセプト・出版された(申請者は単独筆頭かつ共責任著者)。世界に先駆けて転移因子多型を用いたGWASを行い、転移因子多型と疾患との関連を発表することができた。また、本研究の内容をレビュー論文としてまとめた。本レビュー論文はHuman Genome Variation誌にアクセプトされ、現在、出版準備中である(申請者は単独筆頭かつ責任著者)。また、本研究内容を、国際学会Human Genetics Asia 2023、および国際シンポジウムTokyo Symposium Workshopにて発表した。 また、本研究をさらに発展させるため、転移因子多型がどのような分子機序で疾患リスクとなるのかを調べた。言い換えると、多型と疾患とをつなぐVariant-to-Function(V2F)研究を行った。転移因子の有無がゲノムの三次元構造(トポロジー)を変化させると仮説立て、iPS細胞においてゲノムのループ構造を解析した。本内容は基盤Bのサポートを受け、引き続き研究する予定である。
|