研究課題/領域番号 |
22K15386
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
高橋 剛 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 研究員 (70802817)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | CRISPR-Cas12s / 欠失導入 |
研究実績の概要 |
本研究は、CRISPR-Cas12a(以下、Cas12a)による高い再現性と誘導効率をもつ欠失変異導入法の確立を目指す。研究代表者は、Cas12aが標的DNA配列の切断時に5’突出末端を形成させる点に着目し、突出配列が相補的となる2つの標的を選択することで、末端が結合される正確な欠失導入が可能であることを見出した。さらに、突出末端の配列から、結合後の配列が予測できることを示唆する結果を得た。そこで本研究では、突出配列の組み合わせを網羅的に解析することで、再現性が最も高い欠失導入条件を同定する。また、Cas12aのガイドRNA多重発現能力を利用して、欠失させるDNAを断片化することで、欠失導入率を向上させる。最終的に、筋ジストロフィー患者由来iPS細胞において、本技術の遺伝子治療への応用を試みる。 2022年度は、ガイドRNAの多重発現による欠失DNAの断片化が、欠失導入効率を向上させるか検討を進めた。さらに、Cas12aに加えて、よりヒト細胞での編集活性が強く、オフターゲット効果が抑制されたenCas12およびenCas12-HF1の二種類の改変体も利用した。DNA断片化を介した欠失導入のために、通常の2つの標的に加えて、欠失させるDNAフラグメント内にさらに2ヶ所・4ヶ所の標的を設定した。その結果、断片化のためのガイドRNAが発現し、狙い通りに欠失させるDNAフラグメントを切断したことを確認した。しかし、このDNA断片化は、欠失導入効率の向上には寄与しなかった。また、enCas12aとenCas12a-HF1を利用したことで、通常の2標的切断による欠失導入効率の向上が認められたが、これらの改変体においても、ガイドRNAの多重発現によるDNA断片化で欠失導入率は改善しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Csa12aのガイドRNA多重発現によるDNA断片化によって、欠失導入効率が向上するかを検証した。また、enCas12aおよびenCas12a-HF1でより欠失導入を効率化できることが示された。一方で、期待していたDNA断片化による欠失導入効率の向上は確認できなかった。最終的に、欠失導入法を筋ジストロフィー症の治療へと応用するため、iPS細胞を骨格筋へと分化誘導するための実験系を立ち上げた。
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今後の研究の推進方策 |
DNA断片化による欠失導入効率の向上について、断片化するための標的を増やし、より詳細に特徴づける。また突出末端をランダム化したランダムDNAライブラリのアンプリコンシーケンスを実施する。既にランダムDNAライブラリをドキシサイクリン誘導性Cas12a発現HEK293T細胞に導入しており、ライブライリが1細胞あたり約14.8コピー導入されていることを確認している。ランダム化ライブラリのとり得る組合せは65,536パターンであり、1パターンあたり1,000リードが得られる条件でのシーケンスを予定している。また、iPS細胞をより効率的に骨格筋へと分化させるための条件検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文掲載費が想定よりも低額で収まったことで未使用額が生じた。そのため、次年度分と合わせて、消耗品や試薬費用として使用する予定である。
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