研究課題
膵癌をはじめ、様々な疾患で異常発現するRNAを網羅的に解析する手法として、RNAシークエンス解析が汎用されているが、通常のRNAシークエンス解析では解析の対象から外されてしまうRNAの一つとして環状RNAに着目し、膵癌で高発現する新規環状RNAを先行研究で同定している。先行研究にて、少数例での検討ではあるが、新規環状RNAは膵癌診断バイオマーカーとして有用である可能性を報告している。新規環状RNAの膵癌診断バイオマーカーとしての有用性をさらに検証するためには、症例数を増やし多様なステージを含む症例を対象に、症例数を増やして、血液中の新規環状RNAの発現量を測定する必要がある。本年度は、膵癌患者およびIPMN患者の血液検体を効率的に収集するフローを確立し、症例を蓄積した。この中には、画像診断だけでは診断が困難であった症例や、早期診断症例など、臨床的にバイオマーカーのニーズが高いと考えられる症例も含まれていた。さらに、膵癌診断前、膵癌診断時の時系列で検体を回収し得た症例も数例蓄積することができた。このような症例は特に、膵癌の早期診断性能を評価する上で重要であるだけでなく、膵癌の発癌リスクの評価にも応用できる可能性があり、膵癌早期診断ストラテジーの確立に向けて貴重な情報を提供しうる可能性を秘めている。先行研究では、この新規環状RNAがエクソソームに豊富に存在する可能性を示唆する結果を得ていた。本年度は特定の表面抗原を持つエクソソームを濃縮する方法を開発した。この手法を応用することにより、新規環状RNAの検出感度をさらに向上させる可能性が期待される。
2: おおむね順調に進展している
膵癌診断バイオマーカーとしての有用性を検証するために、症例を順調に蓄積できた。また、IPMN患者の検体も継続的に蓄積することにより、発癌前の検体及び早期膵癌検体も数例回収できた。
引き続き、膵癌症例を蓄積していく。また、膵癌の病態におけるこの新規環状RNA発現の意義を解明するために、細胞自律的・細胞非自律的な作用を検証していく。
当初は消耗品を購入予定であったが、本年度は検体の蓄積フローを確立し、継続して検体を保存することに主眼を置いたため、想定よりも消耗品の使用量が少なくなった。今後、本年度蓄積した検体を用いて実験を継続するため、次年度以降に助成金を使用する予定である。
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