研究課題/領域番号 |
22K15405
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西村 碧フィリーズ 岡山大学, 保健学域, 講師 (80931568)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | キャッスルマン病 / 単中心性 / 硝子血管型 / RNA-Seq |
研究実績の概要 |
RNAシーケンスによる遺伝子発現解析を行うため、硝子血管型単中心性キャッスルマン病(HV-UCD)の凍結保存リンパ節検体 5例からRNA抽出を行った。良好なRNA品質が得られた4例については、RNAシーケンスによる遺伝子発現解析を行い、対照群である反応性リンパ節 10例の遺伝子発現パターンと比較した。結果として、HV-UCDにおいて特徴的に発現が亢進している遺伝子群を同定することができた。これらの遺伝子群には、濾胞樹状細胞や線維芽細胞様細網細胞に関連する遺伝子が多く含まれており、病態形成への関連が示唆された。 RNAシーケンスと併行して、HV-UCDのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体の収集を継続した。現在までに、51症例を収集し、それらの臨床病理学的特徴についても解析を行った。その結果、HV-UCDでは濾胞樹状細胞の増生が共通して認められ、2割程度の症例では、リンパ節において異型的な形態を呈する濾胞樹状細胞の出現が認められることが明らかとなった(臨床病理学的な解析結果については、収集時点の症例について、第62回日本リンパ網内系学会学術集会・総会にてポスター発表を行った)。 現在までのRNAシーケンスによる遺伝子発現解析結果と組織学的所見から、濾胞樹状細胞をはじめとする間葉系細胞が、HV-UCDの病態形成に関与している可能性が示唆されており、次年度以降の研究に繋げる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、当初2023年度の中頃までに予定していた、硝子血管型キャッスルマン病の凍結保存リンパ節からのRNA抽出およびRNAシーケンスによる遺伝子発現解析を完了した。当初硝子血管型キャッスルマン病の凍結検体は、全国の共同研究施設症例を併せ20症例程度集積されることを想定していたが、非常に稀少な疾患のため、5例の集積に留まった。また、RNA品質に問題のある症例が1例あり、解析結果は4例と当初の想定より少数となった。 しかし、4例について、対照群である反応性リンパ節10例の遺伝子発現パターンとの比較から、硝子血管型キャッスルマン病に特徴的に発現が亢進している遺伝子群を抽出することができた。従って、稀少疾患故に、キャッスルマン病の診断経験が豊富な施設においても集積可能な凍結検体数に限界があったものの、研究の進捗は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
RNAシーケンスの結果に基づいて、HV-UCDの病態解明や客観的な診断マーカーと成り得る遺伝子の候補を見つけることができた。今後はそれを基にカスタムパネルを作製し、FFPEを含むより多症例について、NGSを用いた検証研究を行う予定である。また、これまでの研究から、濾胞樹状細胞をはじめとする間葉系細胞が病態形成に関与している可能性が強く示唆されていることから、空間トランスクリプトーム解析により、遺伝子発現プロファイルと細胞型・空間分布を結び付けた解析についても検討の余地がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
HV-UCDの凍結検体が想定していたより少数のみの集積となり、RNA-Seqのために計上していた費用全額を使用しなかったため。しかし集積された凍結検体から、次のステップに進むために必要な候補遺伝子群を同定することができたため、次年度以降は空間トランスクリプトーム解析など、さらに病態解明に近づく手法の利用についても検討し、使用する計画である。
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