研究課題/領域番号 |
22K15412
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
木原 淳 自治医科大学, 医学部, 准教授 (10806756)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 子宮体癌 / 未分化癌 / 脱分化癌 / メチル化 / SALL4 / CD34 / Glypican 3 / H3K27me3 |
研究実績の概要 |
未分化癌・脱分化癌は子宮体癌(内膜癌)の新しい分類であり、悪性度が高く、予後が悪い腫瘍です。本研究の目的は未分化癌・脱分化癌の診断や治療の向上に有益な知見を得ることです。そのために患者さんから切除された検体の解析や実験を行っております。2023年度は以下の内容を実施しました。 (1)脱分化癌において未分化癌成分にSALL4、Glypican-3、CD34の発現する症例を見出したことから、未分化癌・脱分化癌21例を用いてそれらの発現を検討しました。SALL4、Glypican-3、CD34のいずれもおよそ半数程度で発現しており、SALL4とGlypican-3は同一症例で発現する傾向があることが分かりました。婦人科腫瘍の病理診断においては胚細胞腫瘍、特に卵黄嚢腫瘍でSALL4とGlypican-3が発現することが知られており、充実性の卵黄嚢腫瘍と誤診しないよう注意すべきと指摘しました(Pathology 2023, Epub ahead of print)。なお、上記3者の発現とSWI/SNFサブユニット発現消失との関連性は認められませんでした。 (2)H3K27me3の発現を未分化癌・脱分化癌のwhole sectionを用いて免疫染色で検討すると、脱分化癌1例で発現消失を認めました。組織マイクロアレイを用いて他の組織型も検討すると癌肉腫の肉腫成分での発現消失を認めました。脱分化癌については核酸を抽出し次世代シーケンサーによるwhole exome sequenceを行いましたが、H3K27me3消失をきたす既知の異常は見つかりませんでした。癌肉腫についてはEZHIP発現を認め、H3K27me3消失に関与していると考えられました。 SWI/SNF複合体異常以外にも子宮体癌の脱分化機序が存在する可能性を示唆しました(Virchows Archiv 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したように得られた知見について雑誌に報告しました。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って、子宮体癌細胞株を用いてSWI/SNF複合体サブユニットのノックダウン実験を行い、形態変化や遺伝子発現の変化をみていく方針です。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を比較的効率的に進められ、想定した消耗品購入費が少なく、次年度使用額が生じました。また、得られたデータの論文化を優先したために一部の解析予定を次年度以降にずらしたことも理由にあがります。次年度においては次年度使用額も含めて細胞実験や次世代シーケンサーによる解析など詳細な検討に使用する方針です。
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