本研究は、難治性がんの代表である肺癌の中から、特に効果的な治療法の開発に至っていない浸潤性粘液性肺腺癌に着目し、生命予後の改善を目的として、治療成績向上の要となる腫瘍発生・悪性化の原因因子をトランスクリプトームレベルで特定し、病態解明に基づいた治療手段の確立を目指した研究である。そのため、大規模かつ高品質な症例試料の確保、革新的なトランスクリプトーム研究手法(NET-CAGE法、継時的空間トランスクリプトーム解析)を取り入れて研究を推進することが、浸潤性粘液性肺腺癌に対する新規治療標的発見への最速かつ最良の術であると着想し、浸潤性粘液性肺腺癌患者検体を用いたエンハンサー・ゲノム転写ネットワークの包括的解析を進めてきた。これまで複数のプロジェクトで実績のある確立された順天堂の肺癌バイオバンクから該当症例を選択し、現在まで一定症例のNET-CAGE法によるエンハンサー・ゲノム転写ネットワークの包括的解析が終了している。この解析を進め、ターゲットとなるソフトクリップしたリードが検出され、エンハンサーが候補に挙がっているが、2年の研究機関内で最終解析結果には至っておらず、さらに症例数を増やして、CAGE解析を行うとともに、組織像に特異的なエンハンサーの同定を進め、注目すべき遺伝子の同定を進める。
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