研究実績の概要 |
本研究ではまず肺癌切除検体 (SCLC:38例, LCNEC:46例)を用いASCL1, POU2F3, YAP1, p40, TTF1, NEマーカー (CD56, synaptophysin, chromograninA)の免疫染色を行った (NEUROD1のみ抗体の不具合で染色未)。腫瘍をASCL1高発現群, POU2F3高発現群, YAP1高発現群, triple-negative群 (NEUROD1陽性群が多数入ってくるものと思われる)の4つのグループに分類し臨床病理学的関係を解析した。その結果SCLCではASCL1高発現群28例 (74%), POU2F3高発現群9例 (24%), YAP1高発現群1例 (2%), LCNECではASCL1高発現群25例 (55%), POU2F3高発現群7例 (15%), YAP1高発現群12例 (26%), triple-negative群2例 (4%)であった。SCLC/LCNECともにASCL1高発現群がNEマーカー高発現なのに対し、POU2F3高発現群ではNEマーカーが減弱していた。SCLCではYAP1高発現群は少なく、YAP1の発現は陰性か一部の症例に散在性に陽性となるのみであった。LCNECではYAP1高発現群以外にも腫瘍内で陽性部が多くみられた。それぞれのグループ間で予後に有意差はみられなかった。 さらに小細胞癌細胞株16株、およびCancer Cell Line Encyclopediaで公開されている小細胞癌細胞株50株を用い、これらを上記4つのグループに分類しそれぞれの遺伝子発現、コピー数変化、遺伝子変異を解析した。その結果4つの因子と相関して増加あるいは減弱するような因子を複数抽出することができた。この中には神経内分泌分化に関わるものや細胞の増殖に関するものも含まれている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞株の解析により抽出された因子の解析を進めるため、切除検体で免疫染色を再度行い4つのグループとの関連や臨床病理学関係を検討する。 in vitroの実験も導入し、細胞株を用いてASCL1, NEUROD1, POU2F3, YAP1および上記で抽出された因子をノックアウト/強制発現させ、神経内分泌因子の変化、免疫応答因子の変化、細胞の生存、増殖、浸潤能等の変化、薬剤感受性などを解析する。
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