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2022 年度 実施状況報告書

CD30によるROS-DSBを介したゲノム不安定性とATL病態進展機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K15420
研究機関東京大学

研究代表者

中島 誠  東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任助教 (30733232)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワードCD30 signaling / Chromosomal instability / CD30 / CD30L / ATL / HTLV-1 / Double strand breaks / Reactive oxygen species
研究実績の概要

申請者らは、成人T細胞白血病(ATL)の病態の進展と共にCD30陽性ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染細胞が増加する傾向を示し、CD30リガンドを介したCD30シグナルは分葉核化、細胞増殖および染色体異常を誘導することから、病態の進行に直接関与し得ることを報告した。本申請研究は、申請者らの最新の研究である活性酸素種によるホジキン細胞およびリード・シュテルンベルグ細胞の分化誘導機構から発想を得ており、CD30を中心としたATLの病態進展機序としてゲノム不安定性の誘導機構を明らかにすることを目的とした。本研究よりCD30シグナルは、CD30発現量依存的に細胞内活性酸素種(ROS)を増加させることが明らかとなった。さらにCD30シグナルはCD30発現量依存的にDNA double-strand breaks(DSBs)を促進し、抗酸化物質の投与によりDSBsの亢進をキャンセルできることが分かった。これらの結果は、CD30シグナルがCD30発限量依存的に細胞内ROSの増加を介して、DSBsが促進することを示す。ATL細胞株および患者検体を用いて、CD30リガンドで長期刺激し、全ゲノム領域の染色体構造をCGH(比較ゲノムハイブリダイゼーション)により比較した。その結果、有意に染色体レベルのGain/Lossを生じた領域が増加していた。抗酸化剤によりGain/Lossの増加がキャンセルされたことから、ROS-DSBsの誘導が、染色体異常を誘導させると考えられる。またこれらの結果は、一部の細胞集団がクローン増殖したことを示す。従って、CD30シグナルはROS-DSBsを介した染色体不安定性を惹起し、その結果クローン増殖を引き起こすと考えられた。DSB repair関連遺伝子に注目すると、ATLでは、病態の進展と共にこれらの遺伝子のLossが増える傾向が見られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、CD30を中心としたATLの病態進展機序としてゲノム不安定性の誘導機構を明らかにすることであり、我々は、ATLの腫瘍化メカニズムとして、「CD30シグナルはROS-DSBsを介した染色体不安定性を惹起し、クローン増殖を引き起こす」という結論を導いている。

今後の研究の推進方策

CD30シグナルが腫瘍化機序に重要な分子の1つであることを示した。さらにCD30発現量依存的にシグナル伝達の出力の強さが変わることから、CD30の過剰発現メカニズムが腫瘍化の進展過程で重要なステップであると考えられる。一部のATLやALCLにおいて、CD30遺伝子座近傍はスーパーエンハンサーが形成されていることが知られているが、この領域をどのような転写因子が結合し、過剰発現に寄与しているか明らかではない。そこでCD30過剰発現メカニズムの解明に焦点を当て、CD30シグナルによるATL進展機序の解明を目指す。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] The oncogenic driving force of <scp>CD30</scp> signaling‐induced chromosomal instability in adult T‐cell leukemia/lymphoma2023

    • 著者名/発表者名
      Nakashima Makoto、Utsunomiya Atae、Watanabe Toshiki、Horie Ryouichi、Uchimaru Kaoru
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 114 ページ: 1556~1568

    • DOI

      10.1111/cas.15706

    • 査読あり
  • [雑誌論文] RAISING is a high-performance method for identifying random transgene integration sites2022

    • 著者名/発表者名
      Wada Yusaku、Sato Tomoo、Hasegawa Hiroo、Matsudaira Takahiro、Nao Naganori、Coler-Reilly Ariella L. G.、Tasaka Tomohiko、Yamauchi Shunsuke、Okagawa Tomohiro、Momose Haruka、 etc.
    • 雑誌名

      Communications Biology

      巻: 5 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s42003-022-03467-w

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] The oncogenic driving force of CD30 signaling-induced chromosomal instability in disease progression of adult T-cell leukemia/lymphoma2022

    • 著者名/発表者名
      Makoto Nakashima, Atae Utsunomiya, Toshiki Watanabe, Ryouichi Horie, Kaoru Uchimaru
    • 学会等名
      第81回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] NEDD8 activating enzyme is a novel therapeutic target for HTLV-1-related diseases2022

    • 著者名/発表者名
      池辺 詠美、松岡 佐保子、中島 誠、村岡 弘美、吉村 千穂子、山岸 誠、内丸 薫、伊波 英克、浜口 功
    • 学会等名
      第84回日本血液学会学術総会
  • [学会発表] Membrane CD30とSoluble CD30の二重解析によるCD30発現評価法の検討2022

    • 著者名/発表者名
      中島 誠、川俣 豊隆、南谷 泰仁、宇都宮 與、渡邉 俊樹、内丸 薫
    • 学会等名
      第8回日本HTLV-1学会学術総会
  • [学会発表] ATL における CD30 発現機構の解析2022

    • 著者名/発表者名
      瀬賀 亜里沙、中島 誠、山岸 誠、水池 潤、宇都宮 與、渡邉 俊樹、内丸 薫
    • 学会等名
      第8回日本HTLV-1学会学術総会

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公開日: 2023-12-25  

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