研究実績の概要 |
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は,腫瘍細胞の発生母地(COO)から胚中心B細胞(GCB)型と活性化B細胞(ABC)型に分類されている.一方、MYCとBCL2の蛋白質共発現からdouble expressor lymphoma (DEL) が提唱され,DELの多くがABC型に属し,予後不良群として認識されている.しかしながら,DELの分子病理学的基盤については未だ不明な点が多い.18q21の増幅はABC型DLBCLで最も多いゲノム異常であると報告されているが,その遺伝子座にBCL2がcodeされており,さらにMYCの遺伝子発現を調節しうる分子TCF4も含まれている.18q21の増幅によってBCL2とTCF4の両発現が亢進し,DELの分子基盤になっている可能性がある.本研究では,免疫組織化学やFluorescence in situ hybridization (FISH)を用いて,MYC, BCL2, TCF4の発現の関係を遺伝子増幅の観点から解析することとした.当院のDLBCL症例から作製したTMA約300例に対し,BCL2, TCF4等の免疫組織化学及びFISHを行い検討した.BCL2染色陽性群のうち,GCB typeではBCL2遺伝子再構成を有する群が,non-GCB typeではBCL2遺伝子増幅群が主体をなしており,比較的相互排他的に見られた.TCF4染色では陽性群と陰性群からなる二峰性の染色パターンを示し,二峰性パターンはnon-GCB typeで顕著であった.TCF4免疫染色とTCF4 FISHでの遺伝子増幅に相関を認めた.現在,TCF4, BCL2の発現や遺伝子の増幅とDELとの関連性について検討を行っている.
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