研究実績の概要 |
大腸癌ではALK, NTRK, ROS1融合遺伝子やMET exon14 skipping(MET ex14s)などのチロシンキナーゼ受容体異常が報告されている。研究代表者は近年進行大腸癌におけるNTRK融合遺伝子陽性腫瘍の臨床病理学的特徴をまとめたが、これらの腫瘍の発生頻度は低く臨床病学的意義はよくわかっていない。今回進行大腸癌においてNTRK以外にALK, ROS1, MET ex14sの探索を行い、臨床病理学的特徴をまとめた。944人からの得られた951例の進行大腸癌に対し、Tissue microarray (TMA)を用いてALK, ROS1, METに対する免疫染色 (IHC)を行い、ALK, ROS1のIHC陽性例には, RNAを用いた遺伝子不均衡発現解析とARCHER fusion plex解析/RT-PCRとSanger sequencingを行た。c-MET IHC 3+となった症例には, RT-PCRとSanger sequencingを行った。ALK IHCは3例(0.2%)に陽性となり、そのすべてにALKの遺伝子不均衡発現を認めた。アーチャー解析の結果、以下の融合遺伝子を認めた:EML4(exon21)-ALK(exon20), EML4(exon6)-ALK(exon19), HMBOX1(exon6)-ALK(exon20)。これら3例中2例は、MSI-high/mismatch repair(MMR) deficientを示し、すべての症例が右側大腸発生であった。ROS1 IHCは1例のみに陽性でROS1遺伝子の不均衡発現やROS1融合遺伝子はみられなかった。c-MET IHC 3+は42例(4.4%)で、そのうち9例にMET ex14sを認めた。これら9例はすべてがMSS/MMR proficientで8例が左側大腸/直腸発生であった。
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