研究課題
花粉症などのI型アレルギー疾患では、アレルゲンが粘膜組織より取り込まれTh2サイトカインを介してIgE抗体が産生され、それらがアレルギー反応の惹起に繋がるとされている。粘膜組織のIgA抗体は病原体やアレルゲンに結合することで、生体内へのアレルゲンの侵入を防ぐことが報告されているが、これらのIgA抗体の産生がどのように制御されているかについては未だわかっていないことが多い。さらには、定常状態だけでなくI型アレルギー疾患などの病態モデルでのIgA抗体産生についても完全には分かっていない。そこで、本課題ではアレルギー性鼻炎モデルマウスから単離したFDCと、B細胞を試験管内で共培養実験することで、FDCによるIgA抗体産生の制御機序を明らかにすることを目指している。本年度は、B細胞自身がどのようにIgA産生を制御するのかについて明らかにすることを目的とした。IgA産生は、大きくCD40やTGF-betaのシグナルを介したT細胞依存的な制御と、APRIL-TACIなどのシグナルを介したT細胞非依存的な制御の2種類があることが知られている。これらのシグナルの機序を明らかにするために、CD40やTACIのシグナル下流に存在する、TNF receptor-associated factor (Traf)5に着目しIgA産生の誘導に関わるか検討した。Traf5欠損マウスからナイーブB細胞を単離し、APRIL刺激すると、Traf5欠損B細胞で、野生型B細胞に比べてIgA産生が有意に減少することを見出した。さらに、Traf5欠損B細胞は、CD40Lの刺激で野生型B細胞に比べて有意に増殖やシグナルが抑制された。これらの結果は、B細胞のIgA産生にTraf5が関与する可能性を示唆している。今後は、当初の目的であるFDCを介した環境側からのIgA産生の制御機序についても明らかにしていく予定である。
3: やや遅れている
本年度は、B細胞自身のIgA産生のメカニズムに着目し検討を行った。しかし、FDCの共培養実験について、FDCを単離するためのメソッドが思いのほか時間がかかってしまい、そのため、進捗状況をやや遅れているとした。
本年度は、B細胞がどのようにIgA産生を制御しうるか、その機序について着目し研究を行った。IgA産生の機序は、環境が作り出すサイトカインなどの因子がどのように誘導されるのかと、B細胞がそれらの因子を受けどのようにIgA産生を制御しうるのか、どちらの機序も重要であると考える。そのため今後は、アレルギーモデルマウスよりFDCを回収し、FDCで発現するIgA抗体の誘導に重要な因子の発現について解析をすすめるとともに、B細胞がそれらの因子をどのように受け取り活性化するのか、二つの側面から明らかにしていきたいと考えている。
本年度の実験計画では、FDCとの共培養実験も行うことを予定していた。しかしながら、B細胞自身のIgA産生制御の機序の実験に時間を要したことから、これらの試薬の購入が行えず、次年度使用額が生じた。これらは、次年度の実験器具等の消耗品に充てる予定である。
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Cells
巻: 12 ページ: 1596~1596
10.3390/cells12121596
The Journal of Immunology
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