研究課題/領域番号 |
22K15444
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
池上 一平 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80837021)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Tfh細胞 / IL-9 / 液性免疫応答 / 免疫記憶 / アレルギー疾患 |
研究実績の概要 |
CD4陽性ヘルパーT細胞サブセットの濾胞ヘルパーT(Tfh)細胞は液性免疫応答を司り、B細胞の抗体産生を制御する。このTfh細胞は免疫難病に関与しており、病態制御機構に注目が集まっている。我々はTfh細胞にインターロイキン(IL)-9受容体(IL-9R)が高発現していることを初めて発見した。炎症性サイトカインであるIL-9は気管支喘息などのアレルギー疾患における治療標的分子の一つとされているが、Tfh細胞における役割は不明である。そこで本研究では、IL-9によるTfh細胞の制御機構解明を目指し、CD4細胞特異的IL-9R欠損(IL-9R-CD4KO)マウスを用いて検討を行った。 IL-9R-CD4KOマウスに外来抗原としてヒツジ赤血球(SRBCs)を投与すると、SRBCs特異的抗体価の有意な低下を認め、所属リンパ組織におけるTfh細胞数の減少を認めた。また、家塵ダニ抽出物(HDM)誘導アレルギー性喘息モデルを誘導したところ、IL-9R-CD4KOマウス肺H/E染色では、比較対象のマウスに比べて肺病変の炎症反応が軽度であった。さらに、SRBCsと同様に、血清中のHDM特異的抗体価の低下をIL-9R-CD4KOマウスで認めた。2022年度に得られたこれらの結果は関連学会に報告した(The 51st Annual Meeting of the Japanese Society for Immunology)。 2023年度はTfh細胞にIL-9を供給する細胞の探索をしつつ、IL-9シグナルがTfh細胞に及ぼす効果の詳細を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の先行研究より、IL-9受容体alpha鎖(IL-9R)コンディショナルノックアウト(IL-9R-loxP/loxP)マウスを世界に先駆けて樹立した(Kamiya S. Ikegami I. et al, J Invest Dermatol. 2022)。このマウスとCD4陽性細胞特異的CREリコンビナーゼ発現(CD4CRE)マウスとを交配しCD4細胞特異的IL-9R欠損(IL-9R-CD4KO)マウスを作出した。このマウスを用いて外来抗原(SRBCs)を投与したところ、IL-9R-CD4KOマウスではSRBCs特異的抗体価の有意な減少を認めた。さらに、所属リンパ組織でのTfh細胞数がIL-9R-CD4KOマウスで減少を認め、Tfh細胞が作用する胚中心B細胞や形質細胞も有意な減少を認めた。また、家塵ダニ抽出物(HDM)誘導アレルギー性喘息モデルを誘導したところ、IL-9R-CD4KOマウス肺H/E染色では、比較対象のマウスに比べて肺病変の炎症反応が軽度であった。さらに、血清中のHDM特異的抗体価の低下を、IL-9R-CD4KOマウスで認めた。これらの結果から、IL-9シグナルはTfh細胞の機能制御に必要であることが明らかとなった。2022年度に得られたこれらの検討内容は、関連学会にて報告した(The 51st Annual Meeting of the Japanese Society for Immunology)。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度では、IL-9シグナルがTfh細胞の機能制御に必要であることが明らかとなった。これを踏まえて、2023年度はTfh細胞にIL-9を供給する細胞の探索を行う。IL-9はこれまでTh9細胞、ILC2、抗原特異的メモリーB細胞、肥満細胞などが分泌することが報告されているが、液性免疫応答の場である胚中心やマントル領域では未だ不明である。そこで、in situ hybridizationや蛍光免疫染色、光シート顕微鏡による二次元的、三次元的形態学的解析から得られる結果や、フローサイトメトリーによる結果を統合し、IL-9産生細胞の同定を目指す。また、Tfh細胞をIL-9存在下、in vitroで培養し機能変容を評価し、IL-9がTfh細胞に与える効果の詳細を検討していく。また、アレルギー疾患患者の末梢血中Tfh細胞についてIL-9R発現を解析する研究体制を構築し、得られた結果と臨床症状との相関から疾患病態を説明できるか、検討を進めたい。
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