研究課題/領域番号 |
22K15449
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中嶋 舞 大阪大学, 微生物病研究所, 特任助教(常勤) (50911319)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マラリア / 転写制御 / エピジェネティクス / ヘテロクロマチン / 寄生虫 |
研究実績の概要 |
マラリアは世界3大感染症の一つに数えられ、新規薬剤やワクチンの開発が急務である。しかしながらマラリア原虫の生態には未知の事象が多く、これらを解明することが今後の医療応用研究やマラリア対策に繋がっていく。 マラリア原虫は真核生物に特有の、ヘテロクロマチンによる遺伝子発現制御機構を有する。この機構は宿主の免疫回避に関わる遺伝子や、また無性生殖期から有性生殖期に転換する性分化というステップに関わる遺伝子の制御に関与しており、現在マラリア研究の中心的課題となっている。ところがこの機構がいつ、どのようなタイミングで開始され、どういった分子が関与しているかということについては全くわかっていない状況である。 そこで研究代表者は、マラリア原虫における性分化のマスター転写因子であるAP2-Gに着目し、独自に確立したゲノム編集および人工染色体技術を用いて、マラリア原虫におけるヘテロクロマチン制御機構を分子レベルで解明することを目的として研究を開始した。 AP2-Gの転写においては、未知の機構によりヘテロクロマチン化が解除され転写が起こり、その後はAP2-G自身がプロモーターに結合し転写のサイクルを回していくことが知られているが、研究計画として申請者らは、AP2-Gの遺伝子領域におけるDNA配列を人工染色体上で自在にデザインしヘテロクロマチン化に与える影響を評価するというアプローチを試みた。その結果、ヘテロクロマチン化の解除のきっかけとなる遺伝子領域がAP2-Gの特定遺伝子領域に存在することを証明した。現在、その詳細なDNA配列の特定や関連分子の同定を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者らは、AP2-G遺伝子座のヘテロクロマチン領域を広範囲に欠失させた原虫株の樹立、およびその株への人工染色体導入によるヘテロクロマチンの構築アッセイを独自技術として確立することができた。また、人工染色体においてAP2-Gの遺伝子領域を様々に欠失させてヘテロクロマチン化の解除の有無をみることにより、AP2-Gの転写に必要な領域を数百bp単位で同定することができた。このことから、本研究の目的の一つである「AP2-Gの転写活性化に必要な配列の同定」はほぼ達成している。 また、ヘテロクロマチン化解除因子の同定に関しても、クロマチン免疫沈降やオリゴによるプルダウンなど複数のアプローチで探索を行なっているので、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、人工染色体アッセイから得られた結果がマラリア原虫のゲノム上でも再現されるかどうか、ゲノム編集により確認する方針である。ヘテロクロマチン領域のゲノム編集は一般的に困難であり、新規の編集技術の確立も同時に試みる。 また、引き続きヘテロクロマチン化解除因子の同定を様々な方法で試みる。現時点では、クロマチン免疫沈降と質量分析を組み合わせた方法や、ビオチン化プローブを用いたプルダウンにより、ヘテロクロマチン化の解除に必要なDNA領域周辺のタンパク質を網羅的に解析するという実験を行なっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、トランスジェニック原虫の作製やヘテロクロマチン構築評価アッセイ系の確立を行うことで当該研究を進めてきたが、次年度に予想以上の専門的解析(次世代シークエンシング、質量分析、専門ソフトウェアによる解析)を行う計画となった。これらの手法には1回の解析に数万円から10万円の費用がかかる。よって今年度研究費を次年度と合わせ使用する(384160円)ことで、より研究が発展すると見込まれると判断し、次年度使用額が生じる結果となった。
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