研究実績の概要 |
細胞壁は絶えず再構築が繰り返されているが、その機構は関与する酵素の活性の解析を通して予測するしかなかった。本研究では病原性糸状菌Aspergillus fumigatusにおけるα-1,3-グルカナーゼに着目し、細胞壁再構築機構と本菌の病原性について解析しようとするものである。 令和4年度には、A. fumigatusの7種のα-1,3-グルカナーゼ遺伝子についてリアルタイムPCRにてその発現量を解析し、うち3種(Agn2, Agn4, Agn5)が主に機能していることが示唆された。そこで、上記3種についてピキア酵母の発現系を構築し、精製酵素を得た。α-1,3-グルカンを基質として3種の酵素の加水分解活性を評価したところ、Agn2, Agn5については加水分解物が観察された一方、Agn4については加水分解活性が認められなかった。 また、令和4年度にはA. fumigatus α-1,3-グルカンの再構築機構を解析する目的で、A. fumigatusの培養時間ごとの細胞壁α-1,3-グルカン量と分子量を評価した。その結果、α-1,3-グルカン量は培養24-72時間で明瞭な変化はなかったものの、α-1,3-グルカン分子量は培養後期に低下する傾向が認められた。 令和4年度には更に、α-1,3-グルカナーゼの酵素活性評価に用いるため、3種存在するα-1,3-グルカン合成酵素遺伝子(ags1, ags2, ags3)のそれぞれの高発現株を作製し、菌糸細胞からα-1,3-グルカンを得た。現在、各株由来のα-1,3-グルカンの化学構造解析およびα-1,3-グルカナーゼによる加水分解活性について評価を進めている。
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