研究課題/領域番号 |
22K15480
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
関 紗由里 国立感染症研究所, エイズ研究センター, 主任研究官 (70758325)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | HIV / T細胞 / 上皮細胞 |
研究実績の概要 |
ウイルス感染症において、体内の感染部位をつぶさに明らかにすることは病態解析のための最優先課題であり、特に持続感染可能なウイルスの場合、感染部位の全解明が体内からのウイルス排除に向けた第一歩となる。HIV感染の中心がCD4分子発現免疫細胞であることは明白だが、体内の意外な箇所でのCD4非依存的感染も存在する。感染T細胞からの腎上皮細胞や精細胞への感染はHIV関連腎症や感染経路の研究過程で自然と発見されたが、最新の知見では気管支上皮細胞へのHIV感染・ウイルス産生も確認されている。本研究の目的は、T細胞-上皮細胞間HIV感染が成立する上皮細胞の網羅的探索とそのメカニズムおよび意義の解析である。 本年度は、T細胞株と腎上皮細胞株を用いて、HIV感染T細胞から上皮細胞へのHIV感染成立を判定する系を樹立した。T細胞株に、GFPを発現し複製可能なHIVのレポータ―ウイルスを感染させた後、上皮細胞株と共培養を行った。T細胞株と上皮細胞株の区別のために蛍光色素で標識された抗CD3抗体を用いて細胞表面を染色した。フローサイトメーターを用いて、AreaとHeightでドットプロットを展開してダブレット・トリプレットを除去した。さらに細胞の大きさ・形・CD3発現レベルでT細胞株と上皮細胞株を区別した。そこでT細胞株がGFPを発現していることに加え、共培養した上皮細胞についてもGFPを発現しているものがあることが認められた。上皮細胞のみに直接ウイルスを加えた場合には、GFP陽性となる細胞は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、HIV感染T細胞から上皮細胞へのHIV感染成立を判定する系を樹立することであり、この計画に則りT細胞株に、GFPを発現し複製可能なHIVのレポータ―ウイルスを感染させた後、上皮細胞株と共培養を行った。まずはT細胞株としてPM1細胞を用いることに決定し、先行研究で作製済みのレポーターウイルスがPM1細胞においてGFPを発現するか確認した。蛍光色素で標識された抗CD3抗体を用いてそれぞれの細胞表面染色を行うと、発現レベルで上皮細胞とT細胞では大差がつき、共培養後に区別することが出来た。本段階を経てT細胞ー上皮細胞間のHIV感染解析系が樹立されたため、本研究の現在までの進捗状況としてはおおむね順調に発展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は計画通り、(1)上皮細胞におけるHIV-1インテグレーション/ウイルス粒子産生の検出、(2)上皮細胞HIV-1感染に伴うサイトカイン遺伝子/分泌量変化の測定、(3)HIV感染T細胞-上皮細胞間感染メカニズムの解析、と進めていく。(1)~(3)いずれに関しても、本年度で樹立した系を基本的に使用していく。上皮細胞ゲノムに組み込まれたHIV-1ゲノムを増幅する実験系と、GFP陽性上皮細胞の培養を継続し細胞上清を回収して、新たな粒子産生をHIV-1 Gag p24 ELISAを用いて測定する実験系は、その後の研究計画の基本となるので確実に進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、T細胞株と腎上皮細胞株を用いて、HIV感染T細胞から上皮細胞へのHIV感染成立を判定する系を樹立した。両細胞株の区別のために今回は抗CD3抗体を用いたが、今後の計画の様々な状況に応じて用いる系の選択肢を増やすため、あらかじめどちらかの細胞だけをCellTrackerで標識してから共培養を行い、色素の有無でT細胞と上皮細胞を区別する系についても準備したい。第一の系の樹立に時間を要したため第二の系は来年度に持ち越しとなったが、次年度の計画は第一の系を用いて進めつつ、次年度使用額を用いて第二の系も樹立していく。
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