研究課題/領域番号 |
22K15499
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
柴田 納央子 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 次席研究員(研究院講師) (60794542)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 腸管免疫 / 短鎖脂肪酸 |
研究実績の概要 |
本年度は、腸管組織内共生細菌であるアルカリゲネス菌と、アルカリゲネス菌の産生する膜小胞内容物による、腸管免疫制御機構に着目した解析を推進した。 これまでに申請者の行った解析結果から、アルカリゲネス菌が代謝産物の短鎖脂肪酸を、膜小胞内に封入することが分かっている。そこで、短鎖脂肪酸が濃縮された状態で膜小胞に封入されているのか、また、膜小胞に封入された短鎖脂肪酸の免疫制御能について、ガスクロマトグラフィー質量分析法や、樹状細胞培養系への膜小胞添加・ELISA解析により検討を行った。その結果、アルカリゲネス菌が菌体内と比較して高濃度の短鎖脂肪酸を膜小胞内部に封入していることが明らかになった。さらに、同膜小胞を樹状細胞の培養系に添加することで、IL-6を始めとした、腸管神経叢の形成・維持に関わるサイトカインの産生が誘導されることが明らかになった。 短鎖脂肪酸は、腸内細菌が放出する代謝産物のなかで、代表的な免疫制御分子として知られている。また、細菌が放出する膜小胞は、外部環境から保護した状態で、内容物を標的細胞へ効率的に輸送することが知られている。腸管組織内共生細菌であるアルカリゲネス菌が、樹状細胞からのIL-6産生を誘導する短鎖脂肪酸を膜小胞内に高濃度に封入していることと考え合わせると、膜小胞内に短鎖脂肪酸を封入することで、腸管組織内における効果的に免疫制御能を実現している可能性が考えられた。 膜小胞内には代謝産物だけでなく、DNAやRNAなど細菌間・細菌-宿主間の情報伝達や遺伝子発現制御能を持つ分子が封入されていることが示唆されており、今後、アルカリゲネス菌由来の膜小胞内に封入されている核酸についても着目した免疫学的・分子生物学的解析を推進していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、腸管組織内共生細菌であるアルカリゲネス菌が、短鎖脂肪酸を膜小胞内に高密度で封入していることや、腸管神経叢の形成や維持に関わるIL-6の産生を促進することを明らかにした。 これまでに申請者の行った解析結果から、アルカリゲネス菌が代謝産物の短鎖脂肪酸を、膜小胞内に封入することが分かっている。そこで、短鎖脂肪酸が濃縮された状態で膜小胞に封入されているのか、また、膜小胞に封入された短鎖脂肪酸の免疫制御能について、ガスクロマトグラフィー質量分析法や、樹状細胞培養系への膜小胞添加・ELISA解析により検討を行った。その結果、アルカリゲネス菌が菌体内と比較して高濃度の短鎖脂肪酸を膜小胞内部に封入していることが明らかになった。さらに、同膜小胞を樹状細胞の培養系に添加することで、IL-6を始めとした、腸管神経叢の形成・維持に関わるサイトカインの産生が誘導されることが明らかになった。 短鎖脂肪酸は、腸内細菌が放出する代謝産物のなかで、代表的な免疫制御分子として知られている。また、細菌が放出する膜小胞は、外部環境から保護した状態で、内容物を標的細胞へ効率的に輸送することが知られている。腸管組織内共生細菌であるアルカリゲネス菌が、樹状細胞からのIL-6産生を誘導する短鎖脂肪酸を膜小胞内に高濃度に封入していることと考え合わせると、膜小胞内に短鎖脂肪酸を封入することで、腸管組織内における効果的に免疫制御能を実現している可能性が考えられた。 以上のことから、おおむね順調に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、腸管組織内共生細菌であるアルカリゲネス菌が、短鎖脂肪酸を膜小胞内に高密度で封入していることや、腸管神経叢の形成や維持に関わるIL-6の産生を促進することを明らかにした。 一方で、膜小胞内には代謝産物だけでなく、DNAやRNAなど細菌間・細菌-宿主間の情報伝達や遺伝子発現制御能を持つ分子が封入されている。膜小胞内のDNA断片には、薬剤耐性菌の発生に関わるプロファージ領域が含まれることが報告されている。また、膜小胞内に封入されたRNAが、膜小胞を取り込んだ細菌の遺伝子発現や、宿主の遺伝子発現を制御することが示唆されている。そこで今後、アルカリゲネス菌由来の膜小胞内に封入されている核酸についても着目した免疫学的・分子生物学的解析を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、使用予定であった共培養用の培地に余剰が出たため、次年度使用額が生じた。共培養実験は次年度以降も実施する予定なので、次年度使用する。
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