研究課題/領域番号 |
22K15500
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
平良 直幸 沖縄科学技術大学院大学, 統合オープンシステムユニット, ポストドクトラルスカラー (40813621)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エフェクターCD8 / JunB / exhaustion |
研究実績の概要 |
がん免疫療法においてエフェクターCD8+T細胞の疲弊化が着目され、数多くの研究がされている。Junファミリーであるc-junやその結合タンパク質であるBATFがその疲弊化に関わることが知られているが、JunBに関する報告はない。申請者はin vitroの系でJunBの発現の低下と疲弊化のマーカであるPD-1やTim-3の発現が増加することに着目して研究を行った。実際にin vivoにおいてJunBの発現低下が見られるのかを急性感染モデルであるLM-OVA感染実験とB16-OVA腫瘍モデルにOVAを認識するOT-1ナイーブCD8+細胞を移入して、誘導されたエフェクターCD8+T細胞のJunBの発現を比較した。予想に反して、腫瘍内に浸潤したリンパ球(TIL)におけるCD8+T細胞の方が急性感染モデルによって誘導されたエフェクターCD8+T細胞よりも発現が増加している結果となった。 腫瘍組織内に浸潤したCD8+T細胞は腫瘍排出リンパ節(TdLN)で前活性化された後、腫瘍組織内に浸潤してエフェクター機能の獲得や疲弊化が誘導されることが近年報告されていた。そこで同一マウスのTdLNとTILCD8+T細胞のJunBの発現を比較したところ興味深いことに発現のレベルが異なり、TIL CD8+T細胞の方が高い結果となった。この結果から、JunBの発現レベルの違いがエフェクター機能や疲弊化の変化をコントロールする可能性があると考え、dTAG-OT1ナイーブCD8+T細胞を移入した後にTILを回収し、ex vivoでjunBの発現を低下させるとPD-1の発現が増加する傾向が見られた。現在はこの系を用いて網羅的に遺伝子の発現変化を見るために準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初の予定していたin vitroのRNA-seqを行わずin vivoの系を用いてTdLNやTILCD8+T細胞におけるJunBの発現を検証した。予想に反して急性感染モデルによって誘導されたエフェクターCD8+T細胞よりも腫瘍内のTILCD8+T細胞の方がJunBの発現が高いという結果が得られた。当初予想していた結果とは反する結果となったが、TILCD8+T細胞をexvivo条件下でJunBの発現阻害をしたところ仮説通りに疲弊化マーカーであるPD-1の発現増加の傾向が得られた。この結果は当初の仮説通りJunBの発現低下がエフェクターCD8+T細胞の疲弊化に関わることを示唆していると考えられた。次年度はTdLNやTILにおけるエフェクターCD8+T細胞のJunBの役割について解析していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
TILCD8+T細胞をex vivoでjunBの発現を低下させた後に遺伝子発現の変化がどのように起こるのかをRNA-seqを用いて網羅的に解析する。加えてin vivoにおけるJunBの発現がどのように影響するのかをTdLNとTILCD8+T細胞のシングルセル解析を行う予定である。
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