研究課題
本研究は脂質代謝によるT細胞の分化制御機構に着目し、アトピー性皮膚炎を誘導する病原性T細胞特有の脂質代謝依存的な機能制御を明らかにし、脂質代謝によって免疫機能を制御することを目的とした。アトピー性皮膚炎特異的な病原性T細胞が脂質代謝依存的に炎症を誘導する機構を明らかにするため、脂肪酸合成の律速酵素であるACC1のコンディショナルノックアウトマウスを用いて実験を行った結果、以下の新たな知見を見出した。1. ACC1欠損マウスにおけるアトピー性皮膚炎病態の抑制:アトピー性皮膚炎病態モデルマウスにおいて、T細胞特異的あるいは皮膚ACC1の抑制・欠損は皮膚T細胞のIL-3産生を抑制し好塩基球の活性化を抑制することで皮膚炎症が抑制される。2. ACC1はIL-3遺伝子座のヒストンアセチル化を制御しており、ACC1欠損によりヒストンアセチル化が抑制された結果IL-3産生が減弱する。3. ACC1欠損病原性T細胞では皮膚の痒みを誘導することで知られるIL-31の発現が抑制される。4. 独自のIL-31ノックインノックアウトマウスを作成しアトピー性皮膚炎を誘導した結果、IL-31を欠損した群で皮膚炎症が抑制される。さらにIL-31産生T細胞に着目して実験を行った結果、以下の新たな知見を見出した。1. Th2細胞を長期間in vitro培養するとIL-31を大量に産生する。2. in vitro培養したTc2細胞はIL-31を産生する。3. Eomesの抑制はIL-31の産生を増強させる。これらの結果より、病原性T細胞の脂質代謝はIL-3およびIL-31の産生をそれぞれ制御し皮膚炎症に寄与していること、IL-31の産生はIL-4から特に強い影響を受けている可能性が示唆された。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)
Pharmacology & Therapeutics
巻: 245 ページ: 108411-108411
10.1016/j.pharmthera.2023.108411
脂質生化学研究
巻: 65 ページ: 251-254
日本脂質生化学会
巻: 65 ページ: 230-231
Science Immunology
巻: 8 ページ: -
10.1126/sciimmunol.add4346