研究課題
膵臓癌は最も予後不良な癌である.肥満と高脂血症が膵臓癌のリスクファクターとして報告されているように, 膵臓癌と脂質には密接な関係があり,近年,脂質メディエーターであるsphingosine-1 phosphate (S1P)と癌との関連が報告されている。S1P signal pathwayの治療標的として,S1P産生酵素、S1P受容体、S1P自体の阻害剤が存在するが,基礎実験で有効な結果が得られても臨床応用までに至ら ないのが現状である。そこで新規治療標的としてS1Pのtransporterであるspinster homolog 2 (SPNS2)に注目し、膵癌におけるSPNS2の作用機序を解明することを目的とした.本年度の計画は以下の通りである。ヒト膵臓癌細胞株4種(MiaPaca2、Panc1、Capan2、BxPC3)を用いて,.1.SPNS2,S1PRのタンパク発現を各膵臓癌株で確認する.2.S1P添加実験:S1Pの添加により細胞増殖能,浸潤能を評価する.3.SPNS2をノックダウン し細胞増殖能,浸潤能を評価する.培養上清中のS1Pの濃度変化をELISA法により測定し,内因性のS1Pが細胞増殖に関与しているか検討する.4 .SPNS2をノックダウンしS1Pを添加.細胞増殖能,浸潤能を評価し,内因性のS1Pが細胞増殖に関与しているか検討する.本年度の成果は、細胞株のSPNS2のRNA、タンパク発現を確認するまでであり、S1P添加実験、SPNS2ノックダウン、培養上清中のS1P濃度測定ならびに令和5年度の計画を含め行う予定である。
3: やや遅れている
ヒト膵癌細胞癌株3種(MiaPAca,Panc1, BxBC3)におけるSPNS2の発現をRNA,タンパクレベルで確認したがS1PRのタンパク発現は抗体がワークしないため断念した。SPNS2のノックダウン実験は現在進行中である。また、S1P添加実験を行うにあたり、S1Pの毒性を確認し、適切なS1P濃度を現在検討中である。当初の予定よりも条件設定に時間をようしており全体としてやや遅れている状況である。
条件設定終了次第、順次、増殖能、浸潤能、S1P分泌能を検討していく。