RET遺伝子異常を有する癌(以下RET異常癌)におけるRET-TKIに対する初期治療抵抗性のメカニズムの解明と、克服治療法について検討した。複数のRET異常癌細胞株(肺癌及び甲状腺癌)にRET阻害薬を曝露させることでHER3シグナルの活性化が認められ、HER3シグナルをRETシグナルと同時に抑制することで、治療抵抗性細胞の生存を抑制出来ることが明らかとなった。 より詳細なメカニズムを解明するため、RET異常癌細胞株のRNAシークエンスを行ったところ、Hippoシグナル伝達経路に関する遺伝子群の変動がRET-TKIによる処理前後で認められ、転写因子TEAD1及びTEAD4の発現亢進が確認された。これらの転写因子の共役因子となるYAPに着目し、RET-TKIへの曝露によってYAPを介したHER3の転写が活性化することで細胞生存に重要な役割を果たしていることを明らかにした。この現象はYAP高発現のRET異常癌細胞株において観察され、これらの細胞株に対しpan-HERファミリー阻害薬をRET-TKIに併用することでより強力に腫瘍増殖が抑制できた。 さらに臨床検体を用いた検討によって、YAP高発現群は低発現群と比較しRET-TKI治療における無増悪生存期間及び全生存期間共に有意に短縮していることが示された。
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