大学附属病院で行われる膵臓癌の手術で摘出される膵癌を検体として用いる研究である。摘出される膵臓癌検体のうち、臨床診断で使用しない部分を用いて、シングルセル解析を行う予定とした。そもそも手術適応になる膵臓癌は腫瘍サイズが小さいものが多い。それに加え、今年度より術前化学療法後に膵切除が行われるようになったことも影響して、研究に使用できる臨床膵癌検体の分量はかなり小さい。そしてそれを細胞単離すると、酵素による細胞毒性に加え、細胞接着が失われた細胞の壊死(アノイキス)が起こることもあり、シングルセル解析に十分な生細胞数を得ることが困難であった。その結果、シングルセル解析に進めない、ということを繰り返していた。しかし、このままでは研究結果が得られないので、産業技術総合研究所のラボと相談し、少量の細胞ではあるが試験的にシングルセル解析を行ってみる方針となり、現在その解析の結果を待っている最中である。 膵癌検体からは癌細胞から形成される3Dオルガノイドも同時に作成しており、こちらは継続してライブラリー作成を行っていく。 今後も同様の状況は継続するため、少量の検体からでもシングルセル解析を行えるようにより細胞障害の少ない細胞単離の方法を模索する。これまで膵癌のがん関連線維芽細胞に対する糖鎖遺伝子同時解析は行われておらず、意義の大きい研究であると考えているので、来年度には成果を得られるように研究を進める。
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