研究課題/領域番号 |
22K15522
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
衞藤 翔太郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (50940087)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 転移ニッチ / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
本年度は転移ニッチの解析を行うために、緑色蛍光タンパクVenusと隣接細胞をラベリングする赤色蛍光タンパクsLP-mCherryを共発現するマウスがん細胞株の作成を行った。この細胞株を用いて、尾静脈投与による肺転移モデルと脾臓投与による肝転移モデルをそれぞれ作成した。それぞれの転移臓器からsLP-mCherry単陽性細胞(がん細胞と隣接する宿主細胞)とsLP-mCherry陰性細胞(がん細胞から離れた正常な宿主細胞)をセルソートし、RNA-seqを行った。同時に転移がん細胞の肺および肝臓における適応機構を明らかにするために、肺転移がん細胞、肝転移がん細胞をそれぞれ分離し、遺伝子発現の比較を行った。
その結果、特にマクロファージや樹状細胞などでがん細胞に対する免疫応答に大きな違いがあることが判明した。この免疫応答に関連する分子のノックアウトマウスを用いて、肺転移、肝転移モデルを作成すると、肺転移では腫瘍の増殖に影響が全く見られない一方で、肝転移モデルでは腫瘍が増大した。この結果は、肺および肝臓で優位に作用する抗腫瘍免疫応答が大きく異なり、組織特異性が存在することを示唆するものだと考えている。
がん細胞のRNA-seqでは、肺転移および肝転移で遺伝子発現が大きく異なることが判明した。この現象はそれぞれの臓器に対するがん細胞の適応機構と考え、肺や肝臓の環境因子や適応機構のマスターレギュレータと思われる分子に着目して研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、転移ニッチをラベリング可能ながん細胞株を作成し、これを用いて転移ニッチを分離・遺伝子発現解析を行うことができた。またその結果から、組織特異的な遺伝子発現変化をがん細胞側、免疫細胞側それぞれで捉えることができており、研究は順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はマクロファージや樹状細胞で見られた抗腫瘍免疫応答の組織特異性がどのように生まれるのか、DAMPsや組織常在細胞の違いなどに着目して研究を進める予定である。またがん細胞の適応機構については、引き続き、肺や肝臓の環境因子や適応機構のマスターレギュレータと思われる分子に着目して研究を進める。
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