研究課題
我々は、Tet on systemをEwing肉腫細胞株RD-ESに導入し、がんの再発・転移に関与していると考えれれているdormant cellを同定・分離し、その特徴を報告してきた。また、より効率的にdormant cellを得るために、Tet on systemと類似している、細胞内酵素と反応し蛍光を発するcarboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester (CFSE)を用いた方法でのdormant cellの同定・分離実験も行った。細胞はCFSEと反応すると蛍光を発するようになる。その後、細胞分裂により娘細胞に蛍光が分散される。従って、分裂を繰り返す細胞は徐々に蛍光が減弱していき、dormant cellのように分裂しない細胞ほど強い蛍光を保持することになる。この現象を利用してCFSE反応後5日間培養した時点で蛍光が強い上位10%の細胞をdormant cellを含む細胞周期の非常に遅い細胞群slow-cycling cells(SCCs)と定義し、SCCsはdormant cellと同様の特徴を持つことを証明した。
2: おおむね順調に進展している
Ewing肉腫細胞株であるSK-ES-1をCFSEと反応させ、SCCsの細胞特徴を評価したところ、①スフェア形成能試験で高いスフェア形成能、②Propidium Iodideを用いたフローサイトメトリーによる細胞周期解析ではG0/G1期の割合が高い特徴的な細胞周期の分布、③高い抗がん剤抵抗性を確認することができていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
本研究の細胞周期が停止ないしは緩やかな細胞を同定・分離する手法は、Ewing肉腫細胞中のSCCsの研究を進める上で非常に有用であると考える。今後は、RNAシーケンスを重ねることで、SCCsにおいてより意味のある遺伝子を絞り込んでいき、Gene OntologyやPathway解析などを取り入れて、SCCsの病態メカニズムの解析に取り組んでいく予定である。また、RNAシーケンスの結果をもとに得られた遺伝子を、Ewing肉腫細胞株においてノックダウンして、in vitroでは細胞増殖能、細胞周期の分布、抗がん剤抵抗性など、in vivoでは腫瘍形成能、転移能などを評価し、Ewing肉腫細胞の表現型に及ぼす影響について評価・検討し、新たな治療標的の探索を行っていく予定である。
調達方法の工夫や現地学会参加頻度の低下により、当初の計上していた金額よりも節約が可能であり、次年度使用額が生じた。引き続き適切な試薬や動物実験を継続することで計画書にそって使用していく。
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International Journal of Oncology
巻: 61 ページ: -
10.3892/ijo.2022.5428