研究課題/領域番号 |
22K15527
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竹森 俊幸 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (20884456)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Dormant cell / Ewing肉腫 |
研究実績の概要 |
我々は、Tet on systemをEwing肉腫細胞株RD-ESに導入し、がんの再発・転移に関与していると考えれれているdormant cellを同定・分離し、その特徴を報告してきた。また、より効率的にdormant cellを得るために、Tet on systemと類似している、細胞内酵素と反応し蛍光を発するcarboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester (CFSE)を用いた方法でのdormant cellの同定・分離実験も行った。細胞はCFSEと反応すると蛍光を発するようになる。その後、細胞分裂により娘細胞に蛍光が分散される。従って、分裂を繰り返す細胞は徐々に蛍光が減弱していき、dormant cellのように分裂しない細胞ほど強い蛍光を保持することになる。この現象を利用してCFSE反応後5日間培養した時点で蛍光が強い上位10%の細胞をdormant cellを含む細胞周期の非常に遅い細胞群slow-cycling cells(SCCs)と定義し、SCCsとそれ以外の集団であるNon-SCCsを比較することで、SCCsが過去の他がん種で報告されているdormant cellに類似する特徴を有することを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究でEwing肉腫細胞株SK-ES-1中のSCCsが高いスフェア形成能、高い抗がん剤抵抗性、特徴的な細胞周期の分布を有することを報告してきた。続いて、SK-ES-1中のSCCsとNon-SCCsのRNAを用い次世代シーケンスを3回行い、両者の遺伝子発現を網羅的に評価したところ、SCCsで2倍以上の発現上昇が確認された遺伝子を4つ(HIC1,NCAN,MT1G,COL6A1)同定することができた。以上から、本研究は概ね順調に進めることができており、今後も検討すべき課題があると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定として、次世代シーケンスを行うことでSCCsにおいて2倍以上の発現上昇がみられた遺伝子であるHIC1,NCAN,MT1G,COL6A1に着目して研究を進めていく予定である。まず、SK-ES-1、A673などのEwing肉腫細胞株中にこれらの遺伝子を導入し、SCCsに近い形質(高いスフェア形成能、高い抗がん剤抵抗性、特徴的な細胞周期の分布など)を獲得するかどうかをin vitro及びin vivoで評価する予定である。さらに、Ewing肉腫患者の腫瘍組織検体を用いて、化学療法前後や予後良好・不良例で分類した組織検体においてこれらの遺伝子を標的とした免疫染色や遺伝子解析を行うことで研究成果の妥当性を検証する予定である。以上の研究を進めることでEwing肉腫細胞中のSCCsの病態メカニズムの解明、新規治療法の探索、新規の予後予測因子の発見に取り組んでいく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、次世代シーケンスから得られた遺伝子群について、さらなる研究を進めていく意義があると考え、そのためには試薬調達、学会・論文での研究成果報告のために、引き続き次年度の使用が必要であると考える。
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