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2022 年度 実施状況報告書

神経線維腫症2型の微小低酸素環境の解明と新たな治療戦略の提言

研究課題

研究課題/領域番号 22K15531
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

田村 亮太  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60649961)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードNF2 / 神経鞘腫 / 低酸素 / 微小環境
研究実績の概要

神経線維腫症2型(NF2)は、merlin遺伝子変異に基づく多発神経鞘腫を主徴とする稀少難治性遺伝疾患であり、根本的治療法は未だ存在しない。我々は、予備実験でNF2の神経鞘腫内に低酸素環境が存在し、腫瘍の増大と関与する知見を得ており、未だ報告がない新規所見である。そこで本研究課題では、難治性NF2における低酸素や腫瘍免疫微小環境を基盤とした新たな病態を、貴重な臨床検体や動物モデルを用いて構築し、低酸素や腫瘍免疫微小環境を統合的に標的とする新たな治療戦略を提言する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、NF2関連神経鞘腫及び孤発性神経鞘腫のヒト検体を3例、15例得ることに成功し、HIF-1α,VEGF-A, VEGFR1, VEGFR2を中心に遺伝子発現を解析した。コントロールにこれらの経路が高発現していることで知られている膠芽腫症例を使用した。その結果、両神経鞘腫瘍はGrade 3程度のhigh grade gliomaに相当する高発現を示した。さらに過去のNF2関連神経鞘腫検体22例、孤発性神経鞘腫症例21例の過去の組織検体を用いてタンパクレベルでもそれぞれの高発現を示した。
NF2関連神経鞘腫及び、孤発性神経鞘腫の初代継代は良性腫瘍故に悪性腫瘍ほどの成功率は示さず、やや苦戦したが最終的に、それぞれ2例、3例の大変貴重な細胞株の樹立に成功した。それらの細胞株に関しても、HIF-1α,VEGF-A, VEGFR1, VEGFR2の高発現を遺伝子発現レベルで評価した。現在、低酸素環境における造腫瘍能評価を行い、HIF-1αの発現抑制及び強制発現の準備を行っている。
また、神経鞘腫はヒトでは前庭神経に生じることが多く聴力障害が生じることが非常に重要な特徴であるが、聴力障害を安定して生じるモデルの樹立報告は少ない。私達は定位移植装置を用いて、マウスの小脳橋角部に移植する技法を編み出し、聴力障害を来すin vivoモデルを樹立することに成功しつつある。

今後の研究の推進方策

低酸素環境下でのNF2関連神経鞘腫及び、孤発性神経鞘腫の造腫瘍能評価を引き続き行い、低酸素環境が神経鞘腫に及ぼす影響を明らかにする。その後、HIF-1αの発現抑制及び強制発現を行い、in vivo モデルで腫瘍増大の差異を評価する。さらに、HIF-1α/VEGF-A・VEGFRsシグナル下流の腫瘍免疫微小環境の解析をまずは、組織学的に行い、NF2関連神経鞘腫及び、孤発性神経鞘腫における腫瘍免疫微小環境の意義を明らかにする。
その後、マウスNF2自然発生腫瘍モデル P0-SchΔ(39‐121) line 27を用いて、上述したHIF-1α/VEGFR1・2シグナル及びTreg、TAM、MDSC等の主要な免疫抑制性細胞の発現を解析し再現性をみる。

次年度使用額が生じた理由

(理由)
効果的に物品調達を行った結果であり、次年度の研究費と合わせて試薬・消耗品などの購入に充てる予定である。
(使用計画)
次年度も、細胞培養、及び動物実験を行っていく、その上でまず動物購入・飼育費に費用がかかる。本治療計画はヒト細胞を用い、BALB/C由来のNude mouseで実験を行う必要がある。以上含め、その他、培養関連試薬、組織解析の関連試薬を中心に購入予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Prognostic significance of preoperative neutrophil-to-lymphocyte ratio in surgically resected schwannomas2023

    • 著者名/発表者名
      Takahara K, TamuraR, Kuranari Y, Karatsu K, Akiyama T, Toda M.
    • 雑誌名

      Front Oncol

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.3389/fonc.2023.1099384

    • 査読あり
  • [学会発表] 神経鞘腫の術後増大予測における末梢血好中球・リンパ球比の有用性2022

    • 著者名/発表者名
      高原 健人、 田村 亮太、 戸田正博
    • 学会等名
      第34回 日本頭蓋底外科学会
  • [学会発表] 神経鞘腫の術後増大予測における末梢血好中球・リンパ球比の有用性2022

    • 著者名/発表者名
      田村亮太、高原健人、戸田 正博
    • 学会等名
      第31回 日本聴神経腫瘍研究会

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公開日: 2023-12-25  

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