研究課題/領域番号 |
22K15537
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
室田 吉貴 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (40909602)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 悪性グリオーマ / 術後遺残癌幹細胞 / 5-アミノレブリン酸 / 合成ポリマー / ニッチミミクリー |
研究実績の概要 |
腫瘍辺縁部に位置するPpIX低蓄積細胞、即ち5-アミノレブリン酸(5-ALA)による光線力学診断法から免れるグリオーマ幹細胞は、術後も遺残する可能性が高いため腫瘍の再発源であると考えられる。PpIX低蓄積性と浸潤能の観点から再発微小環境を模倣する合成ポリマー「ニッチミミクリー」を用いて術後遺残癌幹細胞に対する治療標的を同定することを最終目標にし、以下の進捗を得た。 (1)ニッチミミクリーとして機能するマテリアルを同定するため、独自の合成ポリマーライブラリを拡張し、ガラススライドを用いたアレイ系を立ち上げた。異なる2種類のアクリル系モノマーを組み合わせることで作られる合計180種類のポリマーの重合条件をこれまでに決定した。重合後、ガラススライド上にmicroarray用ピンを用いて各種ポリマーをスポットした(ポリマーmicroarrayスライド)。ポリマーmicroarrayスライド上で細胞を培養することで機能性ポリマーを同定する実験系を確立した。 (2)高浸潤性かつ5-ALAによる検出を免れる性質を担う分子を同定するため、まずは株化した患者由来細胞を低浸潤性-PpIX低蓄積性細胞(分画A)、低浸潤性-PpIX高蓄積性細胞(分画B)、高浸潤性-PpIX低蓄積性細胞(分画C)、高浸潤性-PpIX高蓄積性細胞(分画D)にトランスウェルとセルソーターを用いて分画した。cDNAマイクロアレイにより遺伝子発現パターンを解析した結果、178個の遺伝子が遺残癌幹細胞(再発源)として考えられる分画Cに高く発現していることが明らかとなった。TCGAから提供されるデータベースを用いて、グリオーマ再発患者の予後との相関が特に高い細胞内タンパク質Xをコードする遺伝子Xを同定した。PpIX低蓄積性の遺残癌幹細胞(再発源)を標的とした研究は極めて少なく、遺伝子Xは有望な癌根絶標的であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
術後に遺残し再発の原因となりうる高浸潤性-PpIX低蓄積性細胞の遺伝子発現データと患者データベースを用いて、臨床的意義の高い遺伝子Xの同定に既に成功した。独自のポリマーライブラリを用いたポリマーmicroarray系も立ち上がったため、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子Xをノックダウンした患者由来細胞株をshRNAベクターにより樹立する。免疫不全マウスを用いた移植実験系を用いて、PpIX蓄積性細胞の割合の上昇、腫瘍サイズの低下、およびマウス生存率の上昇を検証する。高浸潤性-PpIX低蓄積性細胞を今年度作製したポリマーmicroarrayスライド上に播種し、PpIX低蓄積性や遺伝子X発現の観点から再発微小環境を模倣するニッチミミクリーを同定する。ニッチミミクリーの遺残型癌幹細胞への作用機序の解明を通じて、さらに治療標的を探索する。
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