研究課題
食生活スタイルの変化により、脂肪肝や肥満の割合は増加傾向であり、2005年には33%程度であったBMI 25以上の人口は、2030年には約60%にも達するとの予想もある。それに伴い、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を背景とする原発性肝癌も更に増えてくることが予想される。また近年化学療法の進歩によりコントロールが可能になり、切除の機会が増えてきた大腸癌などの転移性肝癌においても、背景肝に脂肪肝が増えている。我々はNASHを含めたNAFLDの肝腫瘍微小環境が原発性肝癌および転移性肝癌に対してどのような影響を与えるかを検討した。メチオニン・コリン欠乏食によりマウス脂肪肝モデルを作成し、腫瘍を脾臓より注射することにより、癌の転移を観察した。コントロール群に比べ脂肪肝モデル群で有意に多くの腫瘍を認めた。脂肪肝モデルにおいて、腫瘍免疫抑制が活性化された状態であり、腫瘍の転移、浸潤に免疫細胞が関連することを示しているものと考えられた。蛍光免疫染色で、リンパ球(CD8、CD4)が脂肪肝モデルでコントロール群と比べ有意に減少しており、脂肪肝モデルにおいて肝内の抗腫瘍免疫が低下していることが示唆された。本研究でフォーカスを当てているMDSC(骨髄由来免疫抑制細胞)は、脂肪肝モデルにおいて腫瘍周囲で増加を認めており、さらにフローサイトによる解析を進めている。また、MDSCおよびリンパ球の機能評価を行うことで、肝全体での脂肪肝モデルでの腫瘍免疫微小環境の変化について観察している。これにより、脂肪肝で活性化した腫瘍免疫のシグナルなどを解析し、脂肪肝における腫瘍が受ける影響について検討を行った。
3: やや遅れている
昨年、肝内の免疫細胞の性質を調べるためsingle cell解析を計画したが、実験費用の増加、解析検討が行えない可能性を考慮し、中止した。そのため、フローサイトメトリやRNAによる解析を個々に進めており、計画より遅れを生じている。
原発性肝がんモデルおよび転移性肝癌モデルの腫瘍免疫微小環境について検討フローサイトやRNAの解析から、MDSCやリンパ球を中心に標的分子、腫瘍促進環境となっている脂肪肝での抗腫瘍効果を得る治療法について検討する。
Single cell解析を行うために、前倒し請求をしたが、Single cell解析の実験を見送ったため、次年度への持ち越しが増えました。現在フローサイトやRNA解析の抗体、実験材料等で経費がかかっており、それに充てる予定です。
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J Hepatobiliary Pancreat Science
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10.1002/jhbp.1406