本研究では、肝細胞癌における転移の分子機構および腫瘍免疫回避機構を解明し、その中心的役割を担う遺伝子を制御する薬剤を開発して免疫チェックポイント阻害剤の奏功率を向上させることを目的とする。現在、当院における肝細胞癌で肝切除術や生体肝移植術を施行した症例でVETCやAng-2、mTORの発現を免疫染色にて評価した。患者214名中43名 (20.1%) が VETC陽性で、患者43名中28名 (65.1%)でmTOR陽性であった。VETC陰性患者171名中65名 (38.0%)がmTOR陽性であり、VETC陽性患者の方が有意にmTOR陽性率が高かった (p = 0.0013)。Ang-2発現は、mTOR陰性群よりもmTOR陽性群で有意に高かった (p = 0.037)。214人の患者のうち34人で生体肝移植後に肝細胞癌の再発を認めた。そのうち20人は切除可能であり、6人の原発巣はVETC陽性であった。これら6人の患者のうち5人がVETC陽性の再発病変であった。mTORの発現はVETC陰性の再発病変と比較して陽性の再発病変で有意に高かった (p = 0.0018)。以上よりmTOR発現は、VETC陰性の原発巣および再発病変よりもVETC陽性の原発巣および再発病巣で高いことが明らかとなった。
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