研究課題/領域番号 |
22K15545
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
北野 雄希 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (40814760)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / がん代謝 / 腫瘍免疫 / MYC / PGC1α |
研究実績の概要 |
がん代謝は、がん細胞の発育・進展において非常に重要な役割を担っている。がん細胞は正常細胞と異なる代謝経路により生存に必要なエネルギーを産生しており、正常細胞はミトコンドリア内での酸化的リン酸化を中心に、またがん細胞は解糖系を亢進することでATPを産生している(Warburg effect)。本研究では、解糖系のmaster regulatorとしてMYCを、酸化的リン酸化の regulatorとしてPPARGC1A(PGC1α)を同定した。近年、この免疫回避機構にがん代謝が密接に関与しているという報告がなされている。本研究では、肝細胞癌においてMYC, PGC1αらに制御されるがん代謝が腫瘍免疫に与える影響と、癌の進展に関与するメカニズム解明を目的とした。 これまでに我々は、パブリックデータベースにて肝細胞癌においてMYC高発現とPGC1α低発現が予後不良であることを示し、MYCとPGC1αをはじめとしたがん代謝関連遺伝子の発現レベルを組みわせたsignatureを作成したところ、悪性度が高いとされる低分化型肝細胞癌では解糖系が亢進していることを示した。我々は臨床検体を用いて、肝細胞癌において腫瘍辺縁のCD8+T細胞低発現が予後不良であることを報告した(Cancer Sci, 2022)。今後、これらの知見に基づいてMYCとPGC1αががん代謝を介して腫瘍免疫を制御し、肝細胞癌進展に与える影響について詳細に検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床サンプルの発現解析、in vitro実験、in silico解析などを主に熊本大学で行っている。現時点で、肝細胞癌切除サンプルにおける様々な腫瘍免疫細胞(CD8+T細胞、制御性T細胞、PD-L1)の発現評価を行い解析している。In silico解析も並行して行っており、解析を進めている。MYC、PGC1αの発現確認やin vitro解析、メタボローム解析に関しては準備を進めており、肝細胞癌においてMYCとPGC1αがどのようにがん代謝を制御し、癌の進展に関与するかを調べていく。
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今後の研究の推進方策 |
MYCはがん遺伝子として以前より注目されてきたが、PGC1αとがんに関連した報告は少なく、特にがん代謝との関連の報告は非常に少ない。肝細胞癌においてMYCとPGC1α発現のバランスががん代謝を調整し、腫瘍免疫に関与する機構を調べていく。近年、抗腫瘍免疫能を賦活化する治療(抗PD1抗体, 抗PD-L1抗体)が肝細胞癌においても臨床応用され、腫瘍免疫に着目した治療に関わるバイオマーカー探索や、新たな治療標的探索の重要性は高まっており、これらの免疫回避機構に関わるメカニズム解明は極めて重要な注目度の高い研究課題である。我々は胆管癌においても腫瘍免疫が予後に与える影響を報告しており(Br J Cancer 2018, Ann Surg Oncol 2020, Br J Cancer 2022)、同様の解析が肝細胞癌でも可能と考える。また近年、メタボローム解析や次世代シーケンサー解析も可能になったこともあり、これらを用いて肝胆膵領域癌の新規オンコメタボライトの同定を含めた統合的解析も重要であり、今後進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由と使用計画:試薬、消耗品については、医局内保管のものを使用することができた。 試薬、消耗品の購入に充てたい。また、解析用に外注費にも充てたい。
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