研究実績の概要 |
切除不能大腸癌の予後は未だ極めて不良である.申請者はこれまで,大腸癌において細胞表面膜貫通蛋白であるsix-transmembrane epithelial antigen of the prostate 1(STEAP1)が,酸化ストレスに対する生体防御遺伝子の発現を誘導する転写因子として知られるnuclear factor-erythroid 2-related factor 2(NRF2)の発現を誘導し,細胞内活性酸素種を低下させることでアポトーシスを回避していることを見出した.以後の検討で,代表的なクロマチンリモデリング複合体であるPBAFに特異的に存在する複数のサブユニットとNRF2との間に正の相関が存在することを明らかにした.そこで今回,将来的な新規治療法の開発を目論み,大腸癌におけるクロマチンリモデリング複合体のNRF2を中心とした酸化ストレス制御機構を解析することを立案し研究を進めてきた.まず第一に,The Cancer Genome Atlas(TCGA)を解析し,PBAFに特異的に存在する複数のサブユニットが大腸癌の予後にいかに寄与するかを検討した.その結果,AT-Rich Interaction Domain 2(ARID2), Bromodomain Containing 7(BRD7), Polybromo-1(PBRM1), PHD Finger Protein 10(PHF10)の発現が上昇している大腸癌患者は有意に予後良好であることを示した.今後これらの分子とNRF2との関連についての解析を検討している.
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