研究課題/領域番号 |
22K15549
|
研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
趙 民知 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 研究員 (80808866)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 染色体異数体化 / 染色体不安定性 / Aurora B キナーゼ / がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
多くのがん細胞で共通して見られる染色体不安定性(Chromosomal instability; CIN)は、がんの治療抵抗性や再発と相関するが、その分子機構やがんの悪性化における染色体不安定性の意義に関しては不明な点が多い。胃がん組織を構成するがん細胞のプロイディ(核型)を調べた先行研究で、「がん細胞のCINレベルががんの浸潤・転移過程で変動する」可能性が示唆された(Negoto & Jo et al., 2022)。この観察に基づき本研究では、その検証と、がんの悪性化機構として、CINレベルの可逆的な変化「CINの可塑性」の分子背景を明らかにし、その意義を明らかにすることを目指す。 2022年度では、さまざまなプロイディを持つ細胞の集団であるがん幹細胞を単一細胞クローニングし、核型を調べたところ、がん幹細胞と同様な核型分布を示すグループ、多倍体となったグループ、そして二倍体であるグループの3つに分けることができた。各グループのクローンにおいて、Aurora B基質のリン酸化程度でAurora Bの活性度を、染色体分配エラー率の解析からCINの程度を検討した。その結果、二倍体であるグループは、ほかのグループに比べCINレベルが低く変化しており、それゆえに増殖に有利となっていることが見出され、「がん幹細胞のCINレベルが可塑的に変動する」ことが確認できた。また、Karyo-seqとトランスクリプトーム解析を行い、各クローンのゲノムの量的変化を確認し、CINレベルの変化に伴う遺伝子発現プロファイルを検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に計画していた実験を予定通り実施し、「がん幹細胞を構成する細胞は、さまざまに染色体不安定性のレベルを可塑的に変化しながら増殖する」ことを見出し、CINレベルの可塑性を確認する結果が得られた。本研究は順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度には、がん幹細胞の各クローンにおいて、長期間の継代培養を行い、複数の染色体をターゲットしたFISH法で各クローンの核型の変化を追跡するとともに、染色体不安定性のレベル、増殖性を検討する。また、各クローンをマウス脳に移植し、生体環境での変化も検討する。
|